日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長の上西一美です。皆さんは、相手の過失が高い、いわゆる「もらい事故」を起こした運転者に対して、どのような指導をしていますか?

私はタクシー会社の運行管理者時代、「相手の過失の方が高いのだから良いだろう」と思い、指導を適度に終わらしていた時期がありました。しかし、ドライブレコーダーを導入し、その映像を見ていると、相手の過失が高いとは言え、運転に問題がある運転者が多いことが分かりました。

事故は結果で捉えてはダメで、重要なのはその経過です。どのような運転をして事故を起こしたか、事故をもらったかをしっかりと見て、改善を促さないといけないのです。

例えば、生活道路のなかで車両との出会い頭の事故が発生したとします。相手が一時不停止で交差点に進入した事故になると、通常、過失割合は相手車7:3当方となりますが、これは相手が車やバイクという立場が同じ場合に限ります。

万一、相手が自転車や歩行者なら、過失割合は逆転する場合が多く、たまたま相手によって、もらい事故かどうかが決まっているのです。

交通事故は、相手を選んで起こすことはできません。にもかかわらず、指導者や運転者は、「過失割合」という結果にとらわれすぎて、その経緯を分析せず、運転習慣を変えようとしないのです。
もらい事故は、事故をもらった運転者自身の運転習慣のどこかに問題がある時に起こる場合が多いのです。

例えば、生活道路の交差点では、たとえ一時停止義務がない優先道路でも、構えブレーキや徐行で進入することは鉄則で、場合によっては停止する必要もあります。このような運転習慣を持たずに事故にあった場合は、それを改善しておかないと、次は、「たまたま」相手が変わり、加害事故を起こしてしまうのです。

もらい事故は、運転習慣を変える警告であり、それはラストチャンスなのです。運転者も指導者も、どのような経緯でその事故が起きたのか、しっかりと分析し、過失にかかわらず運転習慣を変えてください。