休憩や時間調整で止まらざるを得ないトラック。中でも駐車場所が限られる大型車のドライバーが休憩場所を探して時間をロスし、脇見運転で事故を起こせば最悪の事態となる。また、トラックで一日のほとんどを過ごす長距離ドライバーが休息前にシャワーを浴びてさっぱりする、女性の入職を増やす面で気兼ねなくトイレが使えるなど休む場所の確保と同時に施設の充実も重要だ。ただでさえ少ない休憩場所を事業者に知らせ、運行管理上でも役立ててほしいと情報をまとめて事前に活用する例がある。

適正な運賃がもらえる会社ならば高速道路を使いSAで一休みとなるだろうが、実際は高速に乗れない、乗ってもSAが満車で止められないのが実情だろう。一般道は全ト協施設事業部が運営するトラックステーション(TS)が全国に25か所あるが、近年は老朽化や立地によっては利用者が減って閉鎖したTSもあり、「使いたいのに使えない」という矛盾が生まれている。

頼みの綱は、トラック事業者が契約する大手軽油フリート会社運営の大型SSや、大型車を止められるコンビニだ。大型SSでは店舗の全国マップを配り、運行管理者が出発前に休憩ポイントを指示するなど活用することも多い。

一方、大型車を止めて休める場所をウェブ検索できるシステムを業界団体が作った例がある。

中国トラック交通共済協同組合(小丸成洋理事長)では6年前、交協連の新規事業特別助成金を使い「大型車駐車場案内システム」を構築。停車できる場所と施設情報をあらかじめ把握し、運行計画に役立ててほしいと作られたもので、中国5県726か所の情報を収録。利用は組合員限定だが、現在地と移動範囲内での2パターン検索できる。

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また、トラック事業者を束ねる地方ト協が情報を集約している事例も数件ある。

 

このうち岡ト協(遠藤俊夫会長)は平成27年、県内の「国道2号大型車休憩施設マップ」を作成し、HPで公開している。「会員の要望と、全ト協からの呼びかけがあり作成した」と言うのは当時を知る井内正明・適正化事業部長。

 

WEB版とPDF版は共に駐車台数や立地などの説明が添えられている。制作時には大型車の駐車場があるコンビニを訪ね、オーナーの了承を得た店舗のみを掲載。同部長は「県内を走る全ての事業用トラックのドライバーに使ってもらえたら」と話す。なお、両団体とも時間やコスト面の課題で更新できず最新情報ではないとのこと。

 

大型車が止められる所は非常に少ない。トラック運送を生活に欠かせない重要なインフラというならば、ドライバーが最良の状態で働くためにも休憩場所と施設の拡充が急務。また地域を跨いで走るドライバーのために、このような検索システムの全国版の登場が望まれる。

 

小脇に入浴グッズ? 乗務員が行く先は

 

大部分が山間部の中国自動車は、利用者の減少で施設を縮小するPAが点在する。岡山県真庭市の「美作追分」もそんなPAの一つだ。実はこの付近に〝謎のコインシャワー〟があると聞き、現場に赴いた。下り側に車を止めると、さっそく小脇に洗面器を抱えたトラックドライバーを発見。行き先は隣接する畑の一角に佇む建物。中はシャワーが8基(1基は鍵付き)ある。

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先のドライバーは「鹿児島と大阪の往復で必ずここに寄る」という。「近所の人が管理しているらしい」と聞き、畑仕事中の女性に声をかけると、なんとご主人が40年前から営んでいるとのこと。本業は別にあり、「ドライバーにさっぱりしてもらえたらと始めた。PAの横だからこそできる」と善意だけで運営していることが分かった。

昨年8月に4基増設したそうで利用者の多さが伺える。維持費もかかるが「儲けは度外視だから」と奥さんは笑う。