皆様こんにちは。経営承継支援の柿原悠佑です。

今回は会社設立時の書類の重要性について、事例を交えて説明させて頂きます。

弊社でご支援させて頂いた案件で、買収監査中に、実はこれまで株主だと思っていた方が株主ではない可能性が発覚し、当初交渉していた買手様と破談した(最終的には別の買手様とM&Aをなされました)事例がありました。まれにある事例かと思います。

売手様の社長は数代目で、会社を設立された方はご逝去されておりました。現社長は設立時の書類、原始定款(会社設立時の定款)等については、「どこにあるか分からない」とのことでしたが、先代から株式を譲り受けていることを示す書類はあったため、M&Aを進めつつ並行して書類を探して頂いておりました。

そのまま買収監査まで進んでしまったのですが、その期間中に、原始定款が発見されました。内容を見てみると、なんと発起人(会社を設立した方)が第三者だったことが発覚したのです。

この「第三者」というのは、当時設立に際して資金を融通頂いた方のようで、こうした経緯から出資者の欄にその方の名前が記載されていました。また、運が悪いことに売手様はその出資者の欄が会社設立をした人を表すものだと気づかず、借用したお金についてはしっかりと返済してきていました。ですが、それはお金を返したというだけであり、株式を買い取った(書面で何か残っている)わけではないため、設立時から株式の移動は一切なされていませんでした。

売手様は一部他人の会社を自身が株主だと誤認したまま世代をこえて運営及び相続をしてきていたわけです。その結果、この事実が発覚した際の交渉相手とは破談となりました。破談以降、発起人たる第三者を探そうとしましたが、既にどこにいるか分からない状況で、半年近く時間をかけましたが、結局見つかりませんでした。おそらく相続もされていたかと思います。

方針転換し、こうしたリスクを前提に進めて頂ける先を探す方向で打診を開始しました。できうる限りの資料を集め、誠実に説明をすることで、ご理解いただける先が出てきたため、無事その会社とM&Aを行うことができました。もし、本稿を読まれている方でM&Aを検討される方がいらっしゃいましたら、一度設立時の書類を確認されてみてもよろしいかと思います。