―物流の変革期を迎えている中で、競争から共創へという話がありましたが、環境問題を考えても、まさに物流においても、同業との協力が欠かせない時代になってきたのではないかと思われます。そうした取り組みについてはどうですか?

 

辻社長(エステービジネスサポート)「同業他社との共同配送は、一部エリアではすでに実施していますが、今後はより積極的に拡大、深堀をしていきたいと考えています。当グループの規模であれば、卸の大規模RDC(Regional distribution center、地域配送センター)なら車単位の納品が可能ですが、中規模、小規模のRDCでは、車単位にまとめるのが難しくなり、エコ配送や物流効率化の観点からも共同配送を今後の大きな取り組み課題としています。今後は業界で推進しているASNデータの活用を考慮した共同配送化に向けて、他社とともに推進していきたいと考えています」

 

弓野社長(バンダイロジパル)「同業共配としましては、当社ではプライズ(景品)業界をターゲットとし、共同配送を強化しています。一昨年にはグループ以外のプライズメーカーの業務を獲得し、川崎営業所、大阪営業所を景品(プライズ)物流拠点として業務を集約しました。現在は外販を含めた5社での共同配送を行っています。今後も現在の配送ルートをベースとし、新たなメーカーの景品配送の獲得を目指すとともに、景品と同様の納品先への筐体(ゲームセンター等に設置しているゲーム機本体【クレーンゲーム機等】)配送についても、当社の強みを利用して拡大を目指していきます。また、他業種、同業他社との共同配送についても、今期から開始した中期計画に『アライアンス強化』戦略の一つとして打ち出しています。アライアンス先となる協力会社には自社の商品の配送をお願いするだけでなく、当社が協力会社の荷物を運ぶことで、双方で不足するエリアを補ったり、得意とする業務を提供したりすることで『Hand in Hand』の関係を構築することを目指しています」

 

山田社長(キリングループロジスティクス)「競合他社との共同物流の取り組みとして首都圏エリアでの小口配送の事例、北海道(道東エリア)や北陸エリアでのJRコンテナを活用した共同の輸配送などの事例があります。今後も物流課題の改善、2024年問題への対応に向けて幅広く検討を行っていきたいと考えています」

 

柳川社長(ホームロジスティクス)「昨年1月から、島根県・鳥取県で、コーナン商事様と店舗搬入において共同配送を実施しています。同エリアは双方とも搬入物量が少なく、荷台の積載量が少ないことが問題でした。そこで、コーナン商事様の商品とニトリの商品を組み合わせた配送を開始しました。その結果、実際に両社のトラック台数を3割削減することができ、二酸化炭素排出量削減にも貢献することができています。また、トランコム様、ユニ・チャームプロダクツ様とスワップボディコンテナを利用した共同配送を行っていますが、これはおかげさまで、一昨年12月の『グリーン物流パートナーシップ会議優良事業者表彰』で『国土交通大臣賞』を受賞することができました」

 

若林社長(コクヨサプライロジスティクス)「商品販売では競合であっても、サプライチェーンの水平・垂直の物流協業で、すでに実績を作り始めています。例えば通販の同業他社、文具メーカーの同業他社などともコミュニケーションをとっています。また、卸と物流協業できないかなども含めて、仲間づくりといった考え方で動き始めています。今後も労働力不足・脱炭素という社会的課題解決の鍵として物流協業に注力していきます」

 

 

―今年はWITHコロナやアフターコロナというように、コロナを意識しながらも、本格的な経済活動が指摘されています。それぞれの業界の今年の生産量予測や出荷見込みについて、教えてください。

 

山田社長「酒類飲料の消費回復が見込まれるため、メーカーの生産量も増加すると予測されていますので、それに伴って物流量も増加すると思います」

 

若林社長「残念ながら文具メーカーの生産量は漸減傾向にあり、物量維持は悲観的です。元には戻らないという前提で、様々な対応を考えていく必要があると思っています」

 

 

弓野社長「引き続き、購買層がハイターゲットとなる、プラモデルや大人買いするフィギュアなどの物量は増加する見込みです。これに合わせ、通販物流は拡大すると思います。また、人気のキャラクターアイテムは海外でも需要も高く、国内出荷に合わせて、輸出も増えると思います。その他ではカプセルトイ業界も好調で、専門店の開店展開に合わせ、物量も増える見込みです」

 

―新年を迎えるにあたり、今年、今年度の目標や抱負を聞かせてください。

 

 

山田社長「安全健康第一がベースの価値観は変わることはありません。環境変化への対応として、『将来に渡り安定して運びきる』と『物流の2024年問題』に向けた確実な準備をしていきたい。その体制を構築するためにも、会社の強みをより強く、弱みを克服し、『人材』を最大の強みにしていきたい。事業や社会への貢献を実感し、その実感が従業員一人ひとりのやりがい・誇りにつながる会社にしていきたいと考えています」

 

弓野社長「中期計画2年目となり、引き続き、物流子会社としてグループのグローバルSCMの構築と、アライアンスとプラットフォーム強化による高付加価値な物流の実現のために各施策に取り組んでいきます。一昨年から、グループでの環境に対する取り組みである『ガンダムリサイクルプロジェクト』や『ガシャポン カプセルリサイクル』に物流面での参画をしています。今後もこういったSDGsへの取り組みは積極的に行っていきます。また、社長就任以来、人材育成には特に注力して取り組んでいますが、社内学校である『ロジパルアカデミー』を核とした従業員の主体的な成長を支援するための取り組みや、多様な人材の力がロジパルの原動力となるよう人事制度再構築に取り組んでいきたいと考えています」

 

柳川社長「当社はニトリグループの『製造物流IT小売業』という独自のビジネスモデルにおいて、物流という重要な一翼を担っています。しかし、ドライバー不足、人件費の高騰、輸送コストの上昇など様々な課題を抱えているのも事実で、これらの課題の解決とローコストオペレーションの実現、標準化への取り組みが私たちの重要な役割だと認識しています。昨年、国内ドレージ輸送を手掛けるホームカーゴを設立、今年は国内物流拠点再配置第一歩となる石狩DCの稼働が控えています。ニトリグループとして、さらなる事業拡大とともにグループ、お客様への貢献を目指します」

 

辻社長「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営推進に物流面で貢献していくために、モーダルシフトをはじめとしたエコ輸送推進、ドライバー問題などの物流課題への対応、改善は避けては通れないものとなっています。今年は将来の安定した物流環境の整備のために、物流EDI活用などを通じ、いかにこれらの問題を改善していくかに、しっかりと取り組んでいきたい」

 

若林社長「当社はこれまでグループ会社の物流業務を担うことを生業としてきましたが、今後はグループ会社以外の物流業務も積極的に受託することで、会社の成長を図っていきたいと考えています。一方で、今後も人件費の高騰や輸送コストの上昇などの課題を抱える中での外部の物流業務受託にはローコストオペレーションの実現が欠かせません。ここへの取り組みにも注力しつつ、既存荷主の物流業務にもシナジーを効かせていけるような取り組みを模索していきます」

◎関連リンク→ メーカー物流子会社5社座談会 変革迎える業界の今後を語る(1)

◎関連リンク→ メーカー物流子会社5社座談会 変革迎える業界の今後を語る(2)