ブリヂストンは現在、リトレッドタイヤ事業に注力している。1960年代から提供しているが、燃料高騰などによる経費削減の必要性、環境貢献やSDGsへの対応などから、ここにきて同サービスへの引き合いが急増しているという。

 

「リトレッド」とは、ユーザーが使用したタイヤを同社が預かり、摩耗したゴム部分を貼り替えて再利用すること。欧米ではすでにトラック・バス用タイヤの約50%がリトレッドを使用しているが、日本ではまだ約20%にとどまる。ブリヂストンタイヤソリューションジャパンの菊地伸治リトレッド事業本部長(写真左)は、「この比率はまだまだ伸ばせるはず」と展望する。

トラック・バス以外では航空機用タイヤにも使用実績があり、新品とリトレッドの組み合わせで1本あたり約1400回の離着陸が可能だという。「航空機のシビアな環境でも問題なく使っているということで、安全性の確立された確かな技術であることはお分かりいただけると思う」(同本部長)。

 

リトレッドの最大の特長は環境貢献だ。「台タイヤ」、すなわちタイヤの骨格部分をリユースすることで、新品タイヤに比べて原材料の使用量が3分の1以下に抑えられる。「新品タイヤ3本」と「新品低燃費タイヤ1本+リトレッドタイヤ2回」で比較した場合、製造段階での使用原材料量とCO2排出量はいずれも約半分に減らすことができる。

 

50台を保有する運送事業者で「新品タイヤ6本+リトレッドタイヤ4本」を使用したところ、それまでの「新品タイヤ10本」と比べ、年間で約43.8tのCo2と、使用原材料量を約35%削減。結果、タイヤ費の約14%にあたる約240万円のコスト削減が実現したという。

 

燃料や各種資材など運送コストの増大が止まらぬ今、経費削減は経営者にとって最大の関心事。これに加え、環境貢献に対する機運の高まりも追い風となり、「21年の終わり頃からリトレッドの引き合いが増えてきた」(同社リトレッド事業企画部の軽部隆章部長、写真右)。

 

 

同社では、ユーザーの使用状況に合わせ、最適な商品やサービスを提案。月次定額制の「トータルパッケージプラン(TPP)」を用意しており、タイヤ単品だけでなく管理やメンテナンスの部分も同社に任せることで、最適なタイヤマネジメントを実現する。

 

 

菊地本部長は、「タイヤを正しく使うことで、タイヤ本来のパフォーマンスを最大限に発揮することができる」とし、長年の運用経験で得られた確かなノウハウによる高いサービスレベルに自信を見せる。さらに「定額制での提供により、タイヤ費の予算が組みやすくなる」という効果も。

 

 

導入したユーザーからは、「ロングライフリトレッドの採用でタイヤ単価は上がったが、タイヤの寿命が長くなり、トータルでのコスト削減が実現した」、「新品とリトレッドの組み合わせという提案が魅力的だった。コスト削減や業務効率化だけでなく、環境効果も創出できる点が決め手となった」などの声が寄せられているという。

導入企業は小規模事業者から大手まで多岐に渡り、保有車両の一部分から導入を始めるケースも多いという。

 

「長い目で見たときに継続して使えるものを選ぶことが、環境貢献やコスト削減につながる」と同本部長。「馴染みのタイヤショップ経由でも構わないので、一度ご相談いただければ。気軽にお声がけを」とし、「リトレッドタイヤを通じて物流事業者、ひいては日本の物流を支えたい」とさらなる普及を目指す。