経済産業省が2021年7月に公表した「令和2年度電子商取引に関する市場調査」によると、20年における国内のEC市場(物販)は伸長率21.71%増の12兆2333億円だった。新型コロナウイルス感染症拡大で巣ごもり需要が高まり、EC通販の利用が増加した。これらの需要を支えているのが宅配で、EC通販事業者にとってラストワンマイル物流の確保は必要不可欠となっている。

そのため、EC通販の大手、アマゾンジャパン合同会社では、物流センターやAmazon Flexなどを整備して、物流を強化。楽天グループは日本郵政グループと業務提携を行って、物流の強化を図っている。

また、家電量販店大手のヨドバシカメラは、翌日配送を可能にする体制を整えるなど物流を整備してEC通販事業の強化を着々と進めている。このように、EC通販事業での成長は、ラストワンマイルをはじめとした物流の確保がカギとなる。

そんななか、酒類をはじめとする食料品の販売事業及び卸売事業を行っているカクヤス(佐藤順一社長、東京都北区)では、コロナを機に酒屋の特徴である「お届け」に磨きをかけ、東京23区内無料配送を行うために整備してきた自社物流を生かして、EC通販事業の強化を進めている。

同社は今年、コロナ禍における家庭向け「宅配」の需要拡大を受け、従来の酒類に限らないプラスの「商品力」と「宅配サービス」の強化として、昨年10月6日から、衣料用洗剤や大人用紙おむつなどの「生活用品」「介護用品」の取り扱いと、一部商品の即日配送を開始した。

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広報・IR担当部長の渡邊岳氏は「当社の主力事業である業務用酒類販売は、同11月になって前年を超える程度(前年比110%)まで回復したが、未だコロナ前に戻るには時間がかかるだろう」とし、「家庭用に関しては、コロナ禍で家庭向け宅配が家庭内需要を取り込み大きく伸長した」としている。

同社では、カクヤスネットショッピングの新規会員数が、コロナ前と比較して上期は全体で約40%増と伸長。同社のECサイトは、オリンピックや猛暑の効果もあって好調に推移し、同9月時点でのアクティブ会員数は、コロナ前の約70%増に至った。

同社では早くから、23区を中心に業務用の自社物流網を整備しており、2トン平車トラックで業務用センターからのルート配送を行い、軽バン(約350台)やリヤカー(約400台)、3輪EVバイク(約50台)で店舗から利用者への即日配送、大型箱車で社内物流センターから家庭用デポへの社内物流を行っている。

一般家庭への宅配では、「なんでも酒やカクヤス(138拠点)」と「KYリカー(28拠点)」、店頭販売を行っていない配達拠点の「小型倉庫(16拠点)」を家庭用物流拠点として、約2500人の従業員(正社員、契約社員、アルバイト全て含む)が配達業務を行っている。※2021年9月末時点。

同社の場合、ECサイトで販売する日用品などの商材は、物流の視点から選んでいることが多い。主力である酒類の販売・配達は、夕方にピークを迎えるため、そこで物量を増やすことはできない。そのため、日中の比較的アイドルタイムのところに入れることができる商材を選んでいる。

渡邊氏は「今後は、食品や毎日使われる日用品なども、利用者の需要増にともなって拡大していく可能性は十分にある」とし、「特に冷蔵・冷凍商品に関しては要望が多いので、乳製品を中心とした宅配事業を展開しているグループ会社の明和物産を通して一部のエリアから試験的に少しずつ取り扱って、将来的に展開していきたい」としている。

同社では現在、一般家庭向け家庭用販売を強化していくため、物流体制の再編やEC通販の注文数の拡大に向けた取り組み、品揃えの強化を行っていくなど、自社物流を生かしたEC通販事業の拡大を進めている。ラストワンマイル物流を整備・確保したところがEC需要を大きく取り込むことができる。

◎関連リンク→ 株式会社カクヤスグループ