ドライバーの採用シーンにおいて留意すべきポイントは数多く、入社後に発覚する「ミスマッチ」は特に回避したい。そんなリスクを低減させるべく運送事業者では会社情報の発信や面接時の説明などに取り組んでいるが、愛知県のある事業者では、求める人材のキャラクターを事細かに設定することで、有効なリクルーティングを実現させている。

マーケティングの世界では「ペルソナ設定」とも言われるこの手法は今や広く知られるようになったが、実際の運用となるとハードルは高い。「欠員」が理由で求人をかける際には焦りが先行してしまう傾向が強く、人材不足が常態化する運送業界では「面接時の印象」が判断基準の多くを占めてしまうためだ。

「仕事内容やタイミングによって、どんなタイプのドライバーが欲しいかは異なる。現場の意見を聞いて、その姿を明確にイメージしておくことが肝要」。同社の社長はそう語り、自社における実践例を説明。「年齢、学歴、住まい、配偶者の有無、性格などを毎回、担当者や現場とすり合わせ、納得した形になってから求人をかける」とする流れのなかでは、担当者が提出した設定を「甘い」と突き返すこともあるそうで、徹底ぶりがうかがえる。

また、ターゲットの絞り込みは求める人物の輪郭を浮き上がらせるだけでなく、面接場面でも効果を発揮するとのことで、同社長は「こちらの意図がはっきりしているため、受け答えに大きな差が出てくる」と指摘。ぼやけた質問でありきたりな回答を引き出すといった不毛な時間を抑えて、的確なヒアリングで「話が早い」面談が可能な同手法の意義に触れる。

「企業の中心には、いつも人がいる。これから長く勤めてもらう前提で考えればこそ、いい加減な気持ちではできない」。同社長はあらためて採用に対する自らの姿勢をそう示すと、常に教訓としている「採用の失敗は教育では補えない」という言葉を持ち出して、会社の姿と形を大きく左右する「人」への思い入れに言及している。