強制的に禁止はできない 喫煙の環境整備とマナー
健康志向の高まりや値上げなどの影響で、非喫煙者が増えている。喫煙による健康被害や非喫煙者に及ぼす悪影響により、先進諸国では喫煙率が減り続けており、世間のたばこに向ける目も厳しくなっている。だが、たばこは合法的な嗜好品であるため、喫煙行為を規制することは難しい。運送会社では40代から50代のトラックドライバーに愛煙家が多く、取引先とのルールで喫煙が制限されることはあっても、強制的にたばこを禁止することはできない。
そもそもたばこの喫煙率は現在、どのくらいになっているのだろうか。2019年の厚労省による成人喫煙率の調査では、習慣的に喫煙している者の割合は16.7%で、男女別にみると男性27.1%、女性7.6%。この10年間でみると、いずれも有意に減少している。
また、国産メーカーの紙巻たばこの販売数量は、1996年が3483億本、2003年が2994億本、11年が1975億本、そして20年には988億本と減少し続けている。健康ブームや改正健康増進法の施行により紙たばこはさらに減少していくと思われる。
カツミ 「それぞれの責任で判断」
関東一円を中心に、工業製品から食品、精密機器などを運んでいるカツミ(原利春社長、神奈川県川崎市)では、ドライバーの6割が喫煙者だ。たばこについて、同社では「お酒や娯楽と同じ嗜好品なので、健康に注意しながら、それぞれの責任で判断してもらっている」という。
「会社としては、建屋の中では禁煙としているほか、取引先に迷惑が掛からないように注意している」とし、「高齢になると、自然に非喫煙者になるので、会社からは特に何もしていない」という。
リープ 「建屋や仕事中などルール設け禁煙」
また、貨物の定期便及びスポット便の配送から、家電の配送設置まで幅広い業務に対応しているリープ(森本正宏社長、埼玉県春日部市)でも、ドライバーの8割がたばこを吸っている。
同社も建屋で禁煙としているほか、取引先に迷惑をかけないために、仕事中は喫煙しないなどのルールがある以外は、たばこに関して厳しくはない。
決して、体に悪影響がないと考えているわけでも、たばこを奨励しているわけでもないが、喫煙ドライバーにとって、たばこは、気分転換や集中力を高めるためのアイテム・嗜好品で、自身の健康や他人への配慮を怠らない上で楽しむ分にはなんら問題はない。
日本たばこ産業北関東支社 髙松亮氏 「無償でアドバイス」
たばこについて、日本たばこ産業(寺畠正道社長、東京都港区)では「たばこは、合法な大人の嗜好品であるものの、喫煙はリスクを伴うので、喫煙するかしないかについては個々人が、喫煙に伴うリスクを正しく理解いただいた上で判断すべき」としている。
また、改正健康増進法の施行について、同社北関東支社の髙松亮氏は「当社は、望まない受動喫煙の防止については賛同しており、喫煙環境の整備やマナーを啓発する活動を実施している」とし、「その一環として、分煙に関する様々な質問や相談に対して無償でアドバイスする『分煙コンサルティング活動』を2003年から行っている」という。
改正健康増進法施行に合わせ、同社の「分煙コンサルティング」には、物流業界からも多く依頼があったという。一番多かった問い合わせは、「喫煙所を屋内から屋外に移動するための留意点は」というもので、他業種と比較すると、安易に喫煙所(室)を廃止するケースは少なかったとの印象もあるとしている。
依頼の実例として、埼玉県の物流事業者では、同社の方針により既設の喫煙室を廃止し、屋外に喫煙所を設置。構内の歩行動線を配慮したうえで、かつ、作業場所により近い場所を選定した。物流事業者からは、このような依頼が多く来ていることから、同社では「他業者に比べて受動喫煙防止など環境整備に対する意識が高い」と感じている。
物流業界で、喫煙する人は少なくない。健康や受動喫煙防止のために禁煙をすすめることに問題はないが、合法である以上、強制はできない。
また、喫煙者の多くは自身に止める意思がなければ簡単に止めることができない。であるならば、自身の健康に注意しながら、非喫煙者に迷惑をかけず、喫煙マナーを守ってもらう方が最も良い方法だと思われる。会社には喫煙環境の整備や喫煙マナーの啓発を行うことで、非喫煙者や喫煙者の双方に働きやすい環境を提供する必要があるのではないだろうか。
◎関連リンク→ 日本たばこ産業株式会社
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