【質問】急速な燃料価格の高騰で大変厳しい経営状況が続いています。同業の運送会社はどのような対策を講じているのでしょうか?

原油輸出国の減産体制が継続される一方、コロナ禍の終息による経済活動の再開が一斉に始まったため、原油の世界的需要が急速に高まり、激しい価格上昇が起こっています。

軽油価格についても1年間に約30円も急騰する異常事態です。

特にトラック運送業は運送原価に占める燃料代のウェイトが高いため、経営に与える影響が甚大です。この状況に直面し、中小運送会社がどのような対策を講じているのか、最近の事例からご紹介します。

A社は大型車が主体で約半数の車両が長距離輸送に従事しています。そのため燃料代の負担が大きく、従来から燃費データを個人別に管理し、ドライバー指導に活用していました。このところの急激な軽油価格高騰を受けて対策を強化し、「エコドライブ報奨金制度」の導入に踏み切りました。

燃費の向上に努力して実績を上げた従業員に報奨金を支払い、活動を促進する狙いがあります。検討の過程で車齢による燃費の違いや稼働率や実車率による違いなどが議論になりました。

トラックの初度登録年月により実燃費を修正して評価する「車齢別修正係数」を設定し、売り上げなどの実績も加味して表彰対象者と報奨金の金額を決めることにしました。報奨金の対象は燃費改善率3%以上のドライバーとし、順位付けして、燃費の改善により会社全体で生じた原資の一部を還元する制度としました。

一方、B社は地場配送が主体の会社であり、ある荷主の物流を一手に任せられ、荷主から信頼される存在でした。荷主とは日頃から密に接しており、ある程度の要望が言える関係になっていました。

燃料サーチャージ制については以前、検討したこともありましたが、燃料価格の変動について、はその都度運賃交渉を行うことで乗り切ってきました。

ところが、今回の異常な急騰を受けて、制度化の必要性を強く認識し、燃料サーチャージ制について荷主と交渉を開始しました。荷主はコロナ禍で打撃を受けたこともあり、当初難色を示しましたが、B社が燃料高騰による影響を丁寧に数字で説明した結果、理解が得られ、燃料サーチャージ制を導入することになりました。

基準価格は前回、運賃交渉時の軽油価格では価格差が大きすぎるため、直近1年間の平均価格を基準とし、変動幅は5円刻みの設定としました。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)