一般企業の事務所内でも普通に喫煙していた時代があったが、現在では社内禁煙は当たり前で、喫煙者に対する視線は厳しくなっている。投資銀行が在宅勤務者も対象として、「就業時間中は全面禁煙」とする施策を発表し、話題を呼んだ。

近年注目される「健康経営」を掲げる会社では、喫煙する社員の健康を心配し、配慮しようとする動きが活発化している。「健康経営」は、年々、認定数も増えており、認定要件の内容もハードルが上がってきているのが現状。2022年の認定項目について変更があった1つが、「従業員の喫煙率を下げるための取り組み」を認定要件の選択項目に加える(両部門)、だ。

 

運送業においては、喫煙がドライバーにとってのストレス発散や長距離ドライバーの場合は眠気防止のためなどもあるため、強く禁煙を勧めにくいという声がある。喫煙する社員側からすると、「喫煙所でしか吸っていないので誰にも迷惑をかけていない」、「個人の嗜好を会社にとやかく言われたくない」など、なかなか対策が進まないケースも少なくない。こういった社員の意識を変えることがまずは第一歩と言える。

 

「健康経営」に関心のある経営者が、いきなり社員に禁煙するように指示すると、反発がどうしても起きてしまう。その結果、社員の健康に関する一連の取り組み全体ができなくなる可能性も出てくる。そのため、禁煙するかどうかは個人の意思に任せ、会社はあくまでも促すだけで罰則などを設けないやり方も一つの手だ。いずれにせよ、経営者が独断で決めるのではなく、決定までのプロセスの中で様々な立場の社員が丁寧な議論を行っていくことが重要だ。

社員の健康は、家庭と会社の双方の理解と協力があってこそ成り立つ。社員一人ひとりが安心して働くためには健康が大前提。「健康経営」に取り組むうちに、社員間で健康に関する話題が頻繁に上るようになり、コミュニケーションが活性化し仲間意識が高まったという声も聞かれる。

企業として、社員の健康のために何ができるか、各社の創意工夫が求められる。