異常な価格で高止まりを続ける軽油に続き、尿素水の大幅な値上げにトラック事業者から悲鳴が聞かれだしたのも束の間、ディーゼル自動車を走らせるのに欠かすことができない、その尿素水自体が入手困難な状況に陥っている。関係者によれば「新規に取引するのは不可能で、既存の納入先であるトラック事業者にも供給量を制限する旨が伝えられるなど切迫している」という。一方、さらに気になるのが「10月の中旬ごろからタイヤの納期が不透明になっている」という噂。トラック事業者にとって厳しい冬が訪れている。

 

11月の下旬に訪ねた西日本地区の運送協同組合。「こんなものが届いたが、どうなんかね」と事務局の担当者が差し出したのはアドブルーの販売大手からの手紙。そこには「(アドブルーに)35%配合されている尿素の価格が国際的に上昇しており…」と書かれ、12月の納入分からリッター当たり約15円の値上げを知らされたという。

 

近隣のトラック協組にも同様の話があり、さらに「1kLタンクの70%までしか入れてもらえないと聞いた」と事務局。両組合に販売する大手販社に確認してみると、すでに価格を交渉するレベルではなく「供給(できるかどうか)の話になっている」(アドブルーの担当部署)との回答。尋ねたのは11月25日のことで、「これまでの取引状況によって例外もあるが、基本ルールは70%供給」(同)との説明だった。

 

30台ほどのトラックを動かす同地区の運送経営者(50代)は同20日、出席していたセミナーの会場で尿素水が手に入りにくくなっている事情を知った。「購入している業者から電話があり、慌てて燃料販社やトラックディーラーなど10社ほどに連絡したところ、1社が500L、もう1社が12月に1kLを確保してくれることになった」というが、その先の不安はぬぐえない。1kLのアドブルーは同社にとって「1か月足らずで消費する量」だという。

 

自動車関係の輸送を手掛ける60代の社長は「トラックディーラーの営業マンから情報をもらい、とりあえず11月15日に1kLのタンクを満タンにした」と話す。同じく30台規模だが、同社の場合は1kLあれば2か月ほどは大丈夫らしい。仕入れ先から「うちは国内生産だから、いまのところ大丈夫」と聞かされたが、周囲の様子を聞くなかで不安は隠せない様子だ。

 

尿素水を製造・販売する会社の社長(60代)によれば「リッター当たりで尿素コストが11月に20円、12月も13円上がる通知があり、この状態が年明けも続く可能性が高い」と説明。同社では12月分の原料の値上げを製品に転嫁せずに我慢するとしているが、それも限界があるのが実情だ。

 

同氏によれば、日本以上に切迫している韓国から「片言の日本語で『1kLを10万円で売ってもらえないか』と何本かの国際電話が入っている」と明かす。一方、「出所がよくわからない尿素水の情報が出回っている」との話もあり、喉から手が出るほど…の状況にあるトラック事業者に慎重な対応を呼び掛ける声も聞かれる。