歩合給の比率が高いとされる運送業界では、運賃から高速代などの経費を差し引いたものに一定のパーセンテージを掛けて従業員に支給している事業者は少なくない。また、運転者が運行した仕事について運賃を公開し、その上で給料を支給しているところもある。ガラス張りにすることで従業員との信頼関係を築く狙いだが、運賃を過小報告している運送会社も存在するようだ。

大阪府の運送会社社長によると、先日採用した長距離運転者は、「売り上げをごまかす会社に嫌気がさして辞めてきた」と語ったという。

運転者が働いていた運送会社は、運転者ごとの運賃情報をノートに記し、自由に閲覧できるようにしていた。行きと帰りの運行ごとの運賃が細かく記され、公開することで特定の運転者に条件のいい荷物が偏らないように配慮。運賃から10%の管理費を差し引き、一定の運賃収入を超えた分にパーセンテージを掛けて、固定給プラス歩合給の形で給料を支給。他の運転者の給料も一目瞭然でわかるようになっていた。

 

ところが、その運送会社の社長は昨年秋頃から、「荷主の景気が悪く、運賃が下げられた」と執拗に強調し始め、運行ごとの運賃が1、2割減少し、結果、従業員の給料も減り始めたという。

 

しかし、物量は従来と変わりがなく、対応も以前のまま。不審に思った運転者は同じ荷主に入る仲の良い運転者仲間や配車担当者から情報を入手。結局、運賃はまったく下げられていないことが判明し、不信感を抱いた従業員は退職したという。

 

運送会社社長は「前の運送会社の経営者がどういう理由で実際よりも低い運賃で情報公開していたのかはわからないが、運賃に関する運転者間の情報交換は素早く敏感。会社と運転者との信頼関係を揺るがす行為で言語道断」と話す。