「感染対策に向けて止まっていた貨物の一部で回復の兆しがみられる。いずれトラック不足と言われる状況に戻りかねないのでは(東京都)」といった声も聞こえるようになった。しかし、宣言解除は感染症流行を理由として進められていた融資や助成金などが終息にむかっていくということでもある。経産省からは今年春に中小企業の経済資源散逸回避などを目的として中小M&A計画が発表されている。2024年問題を抱え、厳しい環境下での生き残りならびにインフラ維持を荷主から求められる中小の物流企業にとって、生き残りに向けた合併・業界再編は他人事ではなくなりつつある。

 

日本M&Aセンター業界再編部の物流業界責任者である山本夢人部長(写真左)は「成長を続ける物流企業にとって、車両とドライバー、そしてその運用ノウハウも持った他の物流企業は魅力的。最近は荷主が自社物流確保のため、物流企業を探しているケースも多い」とし「現在の物流業界は、M&Aが進む成長期。企業譲渡・譲受けを検討する絶好の機会。いずれはドラッグストア業界のように一定の規模まで統合される可能性も高い」としている。

同社は現在、M&Aの仲介に加え、譲渡予定の企業の価値向上の取り組みも行っている。

誠和運輸(大阪府八尾市)は2020年に、まことサービス(矢吹祐介社長、岡山県岡山市)に株式譲渡した。同社は食品を中心とした配送サービスで顧客からの信頼も厚かったが、ドライバーの高齢化と人手不足、そして後継者不足などを理由に株式譲渡を決意したという。

当時社長を務め、現在は顧問として活躍中の髙須賀和人氏(同右)は「お客様との信頼を第一に会社を運営してきた。お客様との関係構築や、その中で仲間と一緒に働くのが楽しくてやっていた会社でもあったから、会社を譲渡することに迷いはなかった」としている。譲渡成約までは8か月だった。

また譲り受け側の矢吹社長も「若くして会社を成長させてきた実績や人柄、そしてこれから必要になる最新の技術・情報にも親しんでいる方なので安心してお任せできた」と話す。

山本氏は「最初にまことサービスの矢吹社長とお会いされたその日に譲渡手続きを前向きに進める旨の返答をいただいている。面談をされてから譲渡条件を考えられる方は多い中、髙須賀様は予め必要条件を明確に設定されていた。矢吹社長もその潔さに心を打たれ、責任を持って譲り受けられる決意を固められたように思える」と分析している。

同氏によればM&Aの決め手に代表者同士の人柄は大きな割合を占めているという。「会社の魅力を見つけ将来を見据えた協力は我々の得意分野。会社の将来を考え譲渡や譲り受けを検討される際にお力になれるはず」と呼びかける。