睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者による事故発生率は健常者よりも高い。だが、「治療が適切に行われていれば運転業務は可能」だと、NPO法人ヘルスケアネットワーク副理事長の作本貞子氏は言う。昨年7月、10年ぶりに自動車運送事業者におけるSAS対策マニュアルが改定された。SAS治療継続の有用性をさらに周知していく必要があるからだ。SAS対策で事故防止とドライバー寿命の延伸は可能なのだろうか。

SASとは睡眠時に気道が塞がって呼吸が止まったり、止まりかけたりする病気で、大きないびきが代表的な症状だ。分かりやすい症状だが、本人は気付きづらく、見過ごされることも多い。

国交省が3日に東京・大手町で運送事業者などを対象に行ったセミナーで、SAS対策マニュアルの解説と運用について講演した作本氏は「SASと特に関係があるのが高血圧。脳・心臓疾患に起因する突然死や健康起因事故を誘発するその背景にはSASがある。脳も酸欠状態になるので認知症やうつ病にもつながる」とし、「認知症になると言われて慌ててSASの治療を開始したドライバーもいる」と述べた。

寿命と事故防止

SAS患者の4割はハイリスク者といわれており、肥満・高血圧・脂質異常・高血糖の所見を3~4項目併せ持っている。4項目持っている人を「死の四重奏」と呼び、死亡する確率が三十数倍に跳ね上がるといわれているため、ドライバー寿命の延伸と事故防止のためにSAS対策が必要となる。

SAS検査を行うことは、本人も意識していない、会社も気付いていない潜在的なハイリスク者の可視化につながるが、国交省の調査によると、検査の必要性を感じている自動車運送事業者は9割だが、実際に検査をしている事業者はバス71%、トラック37%、タクシー24%にとどまる。

検査で健康管理

健康起因による事故を未然に防ぐ対策の一環として、2024年度から3年ごとのSAS検査を開始した新宮運送(木南晋一社長、兵庫県たつの市)。

同セミナーで「健康診断プラスアルファで自身と向き合う」をテーマに講演した木南社長は、「入社年度をもとにドライバーを3グループに分けてSAS検査を計画。未治療だと運転手として仕事を継続できない可能性があることを伝えながら取り組みをスタートした」という。

同社では、全ト協の運輸ヘルスケアナビシステムにSASのデータも連携することで、ドライバーの状況を統合的に把握。検査でSASと診断され、CPAP(シーパップ)やマウスピースの使用を提案されるドライバーもいたが、「治療中の者から『よく寝られるようになった』との声もあった」とし、「会社での健康管理で不安解消につながった」としている。

治療で運転可能

SASの放置は健康起因事故の主原因になるため、「早期発見・早期治療」が重要となる。作本氏は「SASと診断されてもCPAPなどの治療が適切に行われていれば運転業務は可能」としたうえで、「睡眠時間が少なくて睡眠の質が良くない人は、睡眠時間をしっかりとっている人に比べて死亡リスクが約3倍。SAS治療で質の良い睡眠をとることで事故防止とドライバー寿命の延伸を可能にする」とまとめた。