適正化の巡回指導が迫る中、思案にふける東京都内の運送事業者。同社は長距離輸送を軸に事業を営んでいる。

「ほかの会社はどうしているんだろう」といぶかしげな顔でそう話すと、自社のドライバーの日報に目を落としながら、「どうしても労働時間が守れない」とつぶやいた。

「荷待ち時間や積み込み場所までの時間、そして目的まで走る時間を考えると、現状どうあがいても法定労働時間内には収まらない」。そう嘆く。

法定労働時間を守るには、ツーマン運行ができる運賃をもらうか、中継輸送ができる環境を整備するか、もしくは長距離から地場輸送にシフトするかだという。運賃アップや中継輸送は現実的ではなく、長距離に慣れたドライバー達を地場輸送に配置換えなどしようものなら、みんな間違いなく会社を去っていく。それがわかっているだけに手が打てない。

 

「適正化には包み隠さず現状を話すしかない」というものの、「わざわざコンプライアンス違反を露呈するのもどうかなと思うし、少しでも会社をよく見せたいという気持ちもある」と話し、八方ふさがりの状況に、「どうすればいいのかな」と宙を見ながら途方に暮れている。