【歩合給設計編】97

「頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。

今号は前回に続き「歩合給設計編」として時間外上限規制(2024年問題)への給与設計面での対応について解説してまいります(その7)。

1.大手引越会社の裁判の影響
大手引越会社の「裁判例」ではそれまであまり争点にはならなかった「歩合給制」そのものについて判断がなされました。
同判決により、「基本給、手当等の所定内給与を小さくし歩合給ウェイトを大きくすることは、割増賃金額を少額化する目的と見做されるリスクがあること」、そして「ドライバーの労働評価を適正に反映されていない歩合給は司法判断で否認されるリスクがある」ということが示されたと言えます。

2.対策
(1)歩合給を含めた給与制度について
基本給が数万円などの一桁の額で、歩合給の金額ウェイトが高い運送会社は早めに給与制度見直しをした方がいいと考えます。地方の長距離会社では基本給が数万円、歩合給が数十万円という給与体系が多く見られますが、労働者側の外部専門家は同判決を根拠として成功報酬方式で運送会社に内容証明郵便を送付している実態があるので注意が必要です。
特に給与変更を実施し、基本給などの所定内給与額を少額化した会社は要注意です。基本給は少なくとも12万~16万円以上とする必要があるでしょう。

(2)労働評価を適正に反映した歩合給制度とは
ドライバーの労働評価について適正化するためにはどのような歩合基準にするべきか、ということについて、管理者やドライバーのリーダー格の方も交えて真剣に議論するといいでしょう。しっかりと議論したうえで、最後は経営者が責任をもって判断することが必要です。このような建設的な会社運営を行うことが裁判などの係争を防ぐ有効な手段です。

これから設計する場合、「運賃基準」ではなく「距離基準」の歩合給を検討するといいでしょう。「運賃基準」は荷主や運行内容により差があり、ドライバーの労働評価として適正でない場合もあり得ます。「運賃方式」とする場合は「社内運賃方式」とし、「実運賃」とは切り離した方がいいでしょう。

3.留意すべき事項
給与問題、未払い残業代請求対策はドライバー不足問題とともに、24年問題や物流関連法改正にも関わる、重要な経営マターになっていると考えます。

労務トラブルを防ぐためには経営者とともに管理職の強化が必要になります。