未経験者を積極的に採用する運送事業者が増えており、「未経験者限定求人」なども登場している。

大阪府の運送事業者は5年ほど前から未経験者を5人採用し、ほとんどのドライバーが定着しているという。同社社長は、「面接で良い人材だと判断すれば採用しており、ドライバーとしてだけではなく、人としても成長させたい」と語る。

一方で、経験者採用を選択せざるを得ない会社もあるのが現状だ。

前述の社長はその理由について、「毎日の仕事をまわすことに精一杯で、ドライバーを一人前まで教育する余裕がないか、そもそも社内に教育ノウハウがないのではないか」と分析する。

「例えば、初心者ドライバーにしっかり教えるべきなのが踏み切りへの進入時の注意点。警報音ギリギリで踏切に入り、運悪く遮断機が降りてきてしまえば、悲惨な事故になってしまう。大型車両の大きさを正しく把握することを伝える」など。

同社は成功例といえるが、新人定着までの道はなかなかに険しい。指導係となる先輩ドライバーとの相性や、横乗り期間が短すぎるとノウハウが伝えきれないなど、未経験者を採用してから定着させるまでに課題は多い。

また、「私はドライバーに向いていない」とすぐに諦めて退職してしまうケースも少なくないという。「入社して数週間・数か月では、自分の適性などすぐには分からないのに辞める人が多すぎる。若い方は、特に見切りをつけるのが早すぎるような気がする」(同社長)。

ドライバー職の場合、退職者の4割近くが入社1か月未満で辞めているというデータがある。逆に言うと、1か月定着すると、その後辞める確率は大きく下がるということだ。

いくら教育に力を入れても、指導する側の力量が足りなければ新人の不満につながり、辞める原因になってしまう。

一人前のドライバーになるよう育てるためには、教えるべき項目を細かく調整していくことが必要だろう。