現役アスリートのサポート、そしてアスリートのネクストキャリアをサポートするため、ボクシング元世界チャンピオンが立ち上がった。現在、軽貨物事業を展開しながらアスリートの働く環境を整備する一方、趣旨に賛同し協力してくれる企業を募っている。人材不足という課題を抱える物流業界にとっては、人材確保への期待が高まるだけに、動向が注目される。

 

「プロスポーツ選手を目指す若者の働く環境を整えたい。そして、現役プロ生活を終えて次のステージで頑張りたいという人を全力でサポートしたい」ーー。そんな思いで起業し、現在、横浜市で軽貨物事業を手掛けているのが、昨年9月に現役生活にピリオドを打った元ボクシング世界チャンピオンの八重樫東さんだ。

八重樫さんは、第20代WBA世界ミニマム級王者、第40代WBC世界フライ級王者、そして第21代IBF世界ライトフライ級王者という3階級制覇を達成した元世界チャンピオン。そんな偉業を達成した八重樫さんだが、決して順風満帆だったわけではない。八重樫さん自身ボクシングを続ける中で、生活のために働かなければならず、数々のアルバイトも経験してきたという。「食えない時代の方が長かった」と振り返る。

その過程で八重樫さんは、生活のために途中で夢をあきらめていく人を何人も見てきた。さらに、アスリートとしてのキャリアを終え、次のステージに向かう中で、悩み苦しんでいる人もまた、何人も見てきたという。八重樫さんが代表を務めるP&M LAB.(横浜市)は、そんなアスリートのために設立された会社で、横浜市で軽貨物事業を軸に展開している。

 

現在、同社には常時15人から20人のスタッフが働いているというが、そのうちの5人は、ソフトボールの選手やプロレスラー、そして八重樫さんと同じボクサーといったアスリートである。基本的にスタッフは八重樫さん本人が自ら面接し、採用を決めている。

軽貨物事業は本来、個人事業主で、軽トラックは個人で購入することが基本だが、現役アスリート、あるいはネクストステージを目指す元アスリートとはいえ、資金に余裕があるわけではなく、軽貨物を始めるのに負担も決して小さくはない。そのため、八重樫さんは、アスリートがすぐに仕事に就けるよう、車両代などの初期費用を負担する目的でクラウドファンディングを実施した。さらに、資金集めだけでなく、時間を有効に使える汎用性の高い仕事を確保するため、広く協力してもらえる企業を募っているという。

現状は、軽貨物を軸としているが、将来的には、庫内作業なども視野に進めたいとしている。

八重樫さんは、「どんなスポーツでもプロとして飯を食っていけるのは、本当に一握り」とした上で、「そんな厳しいプロの世界を目指すアスリートの夢をサポートするとともに、現役を退いた元アスリートを次のステージへしっかりと導けるようにサポートしていきたい」と話している。

◎関連リンク→ P&M LAB.