経営再生物語(349)小集団活動のすすめ方(7)―2
A社の経営方法はユニークである。例えば、給料は「お下り」、賞与は「お供養」。この意味は、労働の代価としてもらうものではなく、働かせていただき、お客さまに喜んでいただいた結果、利益から分配されるという考えを表現している。朝礼は維摩経、終礼には般若心経を唱え、「祈りの経営」を実践している。
A社とB社の違いは、企業文化として哲学があるかないかである。A社に入って維摩経や般若心経を唱えたいと思う人は、稀であると思う。誰でも最初は嫌がるが、自然と社風に染まるのではなかろうか。
いずれにせよ、人間づくりという哲学の存在が経営成績として、A社をB社と比して優秀にしている源動力であろう。そして、「祈りの経営」ということで仕事に、プライドを持っているのが大きい。B社の従業員の「わしらはボロクズや」との嘆きとの差は大きい。
特色を出そうとする姿勢がA社を優秀にしている。
小集団活動の実践は、一人ひとりにプライドを持たせるのだ。一人ひとりに働き甲斐があるのとないのとでは、企業の幸せと成長に響いてくる。働き甲斐は何によってもたらせるのか。
一つは、仕事に対するプライドである。プライドは特色をもつことで生まれる。ビルの清掃でも、義務感でお金の為だけの、高齢者のウバ捨て山のような職場で、果たしてプライドが生じるものだろうか。やはり、他人に対しては喜びのタネをまき、生き甲斐のある世の中にしようと心に太陽をもって働くからプライドが生じるのか。「人のお役に立つのだ」との企業姿勢がそこで働く人間を豊かにしていく。
二つ目としては、社長の姿勢と行動によって決まる。一人ひとりの社員に声をかけ、コミュニケーションを十分に行い、「どうか成長してほしい」との願いをかけることだ。
そして三つ目として、社員が喜んで働ける職場環境を整えていくことだ。当たり前のことであるが、この三つのポイントを繰り返し持続して、実践していかねばならない。 (つづく)
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