労働力不足を解消するため、即戦力の確保を目的に外国人労働者を受け入れる「特定技能」制度に自動車運送業トラック分野が新たに追加された。受け入れ開始に向け、熊本県宇城市の運送会社アップライン(田中一成社長)ではすでに、日本語能力試験がN3レベル(日常で使われる日本語をある程度理解できる)のカンボジア人3人を内定し、評価試験が開始されるまで日本語の勉強など準備を進めている。「特定技能」制度で外国人を採用するために準備しておくべきことを確認した。

特定技能制度の在留資格は「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類。新たに追加された自動車運送業は「特定技能1号」で受け入れ、在留期間は通算で上限5年。自動車運送業分野では2万4500人を受け入れを上限としている。

 

外国人に求められる要件は、特定技能1号試験(自動車運送業分野特定技能1号評価試験〈トラック〉)の合格、第一種運転免許の取得、日本語能力試験N4レベル(基本的な日本語を理解することができる)以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要がある。

 

一方、受け入れ企業側は、Gマーク認定か働きやすい職場認証(一つ星でも可)がなければ受け入れることができないため、どちらかを取得する必要がある。そのうえで、登録支援機関に依頼することが望ましいとされる。

 

だが、受け入れる運送事業者が登録支援機関を選ぶのは簡単ではない。「良い登録支援機関かどうか」を手数料などの金額だけで判断することは難しく、運転などの教育コストを考えると「安い」ところは教育が不十分である可能性があるという。

 

また、「現地で運転教育をしっかりします」という登録支援機関はあるが、カンボジアで教習所を運営する外国人ドライバー支援機構(小林良介社長、福岡県大野城市)以外に、現地で自動車学校を運営して日本の指導員が運転教育を行っているところはないという。

そのため、日本の交通規則にあった運転教育(実技)を「しっかり行える」というところがあれば、どのような運転教育を行うのか調べてみる必要があるかもしれない。

外国人を採用するためにかかる費用について、外国人ドライバー支援機構の小林社長は、「登録支援機関によって違いはあると思うが、外国人紹介料は1人につき40万から80万円くらいで、これに渡航費やビザの申請費用などが別途15万から20万円くらいかかる」としている。これらの費用に加え、日本に来てからの免許取得費用や給料が発生する。

外国人の給料について、小林社長は「残業も含めて、総支給額は最低25万円がラインになる。基本的には日本人と同じくらいの給料を出さなければいけない。雇い入れてからのコストは、外国人の住まいなども必要になるため、もっと多くなる」としている。

また、「外免切替がポイントとなるが1度の実技試験で合格するのは難しく、6か月の特定活動期間内で合格しなければならないとなると何度も試験を受ける必要があり、リスクも伴なってくるため、あえて外免切替をせず、日本の免許を取得した方が良いと考えている」という。

同社長は、「外国人を即戦力として考えた場合、ゼロから日本語ができない外国人を採用するとなると、まずは日本語をN4レベルにするまでに早くて9か月、長くて1年2、3か月くらいはかかる。その後、在留許可証の申請などに2、3か月くらいかかるため、日本に来るのは内定を出してから1年半くらい。日本に来てからは、普通免許取得に3か月、そして特定技能のビザ申請に1か月半くらいかかるので、この間に大型免許を取得する」としている。

「即戦力とはいえ、内定から2年くらいは時間がかかるため、外国人を受け入れると決めたらすぐに準備に取り掛かる必要がある」とし、グループ会社のアップラインでは、受け入れ開始までに行える準備を進めているという。

 

◎関連リンク→ 株式会社外国人ドライバー支援機構