乗用車の4台に1台がタイヤの空気圧不足でバーストの危険性が増しているという。一方、トラックは、運送事業者が点検・整備をしっかりと行っているため、近年、空気圧不足の状況はあまり見られなくなり、タイヤバーストによる死亡事故など大きな事故は減少している。現場は事故の危険性を十分に理解していると思われるが、人間が行うことなので、見落としや勘違いが100%起こらないとは限らない。

交通事故総合分析センターの交通事故統計データによると、パンクやバーストによる死亡事故は過去5年間に、大型車や中型車では見られなくなったが、事故が無くなったわけではない。夏のダメージが秋に現れるともいわれるタイヤのケアを、夏に改めて意識して取り組んでいく必要がある。

エアゲージでのチェックを 東港タイヤサービス

自動車用タイヤ・ホイールの販売・修理・サービスを提供している東港タイヤサービス(前田尚紀社長、愛知県東海市)は、定期的に取引のある運送事業者を訪れ、空気圧充填講習などを行っている。前田社長は「仕事柄、車で走っていると、たまに空気圧が十分でないトラックを見かけることがある」という。

「タイヤの性能が良くなっていることもあり、事故にならずに済んでいるとも考えられるが、空気圧不足での走行はとても危険。点検・整備など当たり前の作業に慣れることなく、改めてしっかりと意識しながら行う必要がある」とし、「面倒だと思っても、経験に頼らずにエアゲージでチェックすることをお勧めしたい」としている。

メンテナンス意識して行う 日本自動車タイヤ協会

空気圧不足について、日本自動車タイヤ協会(東京都港区)では「空気圧が少ないと、まず、路面との抵抗が多くなるので燃費が悪くなる」とし、「トラックなど大型車は特に、空気圧不足と過荷重がタイヤ損傷に直結する。タイヤはゴムだけでできているのではなく、内部にスチールのコードやナイロン繊維のコードが入っており、異常発熱でその部分がはがれて膨らんで、耐えられなくなってバーストする」と話す。

タイヤ空気圧が不足した状態での走行は、ドライバーが気づかない場合もあるため、そのまま走行を続けるとタイヤが加熱され、最終的にバーストすることがある。だが、夏の気温だけでタイヤがバーストすることは無い。適正な空気圧と荷重であれば問題はないが、適正でない状態だとタイヤが異常発熱して、夏の暑い外気温が促進要因となる。

「トラックにもいえることだが、今の乗用車は性能が昔と比べて格段に良くなって、ユーザーが自分でメンテナンスすることが少なくなった。同じように、タイヤの性能も上がったが、基本原理としては自然低下が避けられないため、メンテナンスは依然として意識して行う必要がある」としている。

タイヤ損傷を防ぐためには、空気圧不足と過荷重に注意しなければならない。特に大型トラックは、隔たった積載や誤ったタイヤサイズ変更による過荷重になるケースと、高空気圧設定を必要とする偏平タイヤが空気圧不足となっているケースがある。

また、空気補充時と充てん作業時には多くの事故が発生しているため、安全徹底が必要となる。極端な空気圧不足の場合は、空気補充を急がず、整備士やタイヤの専門家に状況を伝えて、判断を仰ぐことが重要で、これを徹底しなければならない。

手を抜かずに集中して作業 角田運送

一般貨物並びに鋼材の輸送を行い、自社で整備工場も運営している角田運送(千葉県市川市)の角田正一社長は、「トラックのタイヤバースト事故は現在、ほとんど起きていないし、起きる可能性も少なくなっている。ドライバーや現場のスタッフは、タイヤバースト事故の怖さを知っているので、チェックは欠かさない」と話す。

「タイヤの整備や点検は当たり前のように行い、習慣になっているが、その精度を年々高めており、決して手を抜かずに集中して作業に当たっているので、事故が発生しなくなっている」という。

徹底した事故対策や点検を 石橋梱包運輸

成田を拠点に、工業用精密機械をはじめ、住設関連商品やプラスチック製品などの輸送を行っている石橋梱包運輸(佐藤俊幸社長、千葉県山武郡)もまた、自社整備工場で整備士が中心となって、タイヤの整備点検を行っている。

同社では、毎週土曜日に勉強会や反省会を行い、月一回の全体会議を集約して年に1回研修発表会を実施しており、その都度、タイヤを含めた、安全講習を行っている。「常に安全対策には意識して取り組んでおり、徹底した事故対策や点検を行っている」という。