【質問】社員数60人の運送会社です。今後の勝ち残りを目指して、CSRへの取り組みを経営の柱にしていきたいと考えています。同業他社での取り組み状況や留意点を教えてください。

 

現在、運送業でCSR推進体制を構築し、社内外に方針や目標を明示している会社はあまり多く見られません。上場運送会社や物流子会社の例が大半であり、中小運送会社ではまだ少数派といえます。ところが最近、中小運送会社からCSR推進体制を検討したいという相談が複数出てきました。背景には、取引先である大手荷主の大半がCSRやSDGsへの取り組みを強化したことがあります。

運送会社が取り組み始めた理由は、①社内における制度改革への動機づけ②優秀な人材の確保③取引先との信頼関係強化④取引先拡大のビジネスチャンスなどを意図しています。CSRは文字通り「企業の社会的責任」であり、その取り組み内容は会社ごとに異なります。各社が自らの社会的責任を分析し、トップの取り組み方針を明示します。次に具体的な目標設定を行い、その数値を進捗管理していきます。

運送会社におけるCSR推進体制は、通常、社長がCSR委員会の委員長となり、役員や幹部社員を中心に構成したメンバーで定期的な打ち合せを進めつつ、全社に方針を徹底して進捗管理します。運送会社の場合は、安全と環境のテーマは欠かせません。例えば、①安全②環境③働きやすい職場づくり④人材教育などのテーマ設定を行い、それぞれに具体的な目標数値を決め、期限を定めて取り組みます。例えば、①交通事故ゼロ②作業を含む労災ゼロ③燃費10%向上④環境型車両の導入促進⑤労働時間削減(残業平均60時間以内達成)⑥休日休暇増加(月平均2日増)⑦人権への取り組み(セクハラ、パワハラ、LGBT研修実施)⑧女性活躍(女性ドライバー〇人採用)などのテーマと目標を設定します。テーマと目標が決定したら、全事業所(営業所、倉庫など)に各事業所の目標を設定してもらい、次に各事業所の目標に沿って、従業員個々の個別目標を設定してもらいます。

このように、CSRの推進を従業員個人の目標に置き換えないと、CSRがお題目で一向に進まないという結果になります。人事考課制度は通常の考課項目に加えて、CSRのテーマに沿った目標管理(自主目標の設定)を付け加えて個人の取り組みを評価する必要があります。CSRを活用することで、社内の改善取り組みに対する意義づけと理解が進みやすいメリットがあります。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)