ANA Cargo 脇谷社長「これからの物流はデジタル化が必須条件」
ANA Cargo(脇谷謙一社長、東京都港区)が、日本の物流の一角を変えるべく、活動を始めている。日本での広域国際貨物は船が中心だが、コロナ禍に航空貨物がごくわずか0・数%増えただけで航空業界はパニックになったという。しかし同時に、人の行き来がなくなり、旅客機が全世界で飛ばなくなってしまったことから、マスクや医薬品など、貨物だけで飛行機を飛ばした。
脇谷社長は当時を振り返り、「初めての経験だったが、世間の役に立っていることを実感した」とし、「物流はコストの一つで低ければ低いほど良いという単純な発想で今日まできたが、そうではなく、大事な時に必要なものを運ぶ重要なインフラなんだと、働いている側でも意識が変わった」という。
「在庫をなくすジャストインタイムから在庫保有型に変わった。航空はスピードが命。船輸送などでスピードを要さなくなり、2023年は相当苦労した」というが、一方で「昨年の秋くらいから航空貨物のキャパシティが大変な状態になった」と、EC関連の動きも感じていたという。その中で、一番の痛手は「コロナ禍に働き盛りの年代の人材がほかの業界に流出してしまい、人材のピラミッドに空洞化ができてしまったこと」と同社長は指摘する。
現在はプロダクトの強化を図り、大型のフレーターを持ったこともあるが、一般物だけでなく、大型動物や半導体創造装置、大型の車両なども運んでいる。そのためオペレーションとマーケティング両方のプロフェッショナルの担当を置き、医薬品の扱いなど専門的な知識を備えカスタマイズを可能にした。「本当は日本発着を増やしたいところだが、今はアジア中国欧米の流動を取り込んでいる」と説明する。さらに「比較的空いている昼間帯限定の『コンテナバリュー運賃』というサービスも4月に新設した。指定サイズのパレット梱包単位なので、顧客が空いているトラックをチャーターして持ち込むことができるサービス」という。
これからの物流について、「日本全体の物流は少し遅れていると感じる」とし、「今後一層、ITをベースにしたビジネスの考え方に変わっていくことは間違いない。それらに参画しなければ事業として成り立たない。文字を書いたりファクスしたり電話したり、なんて時代ではない。全部、携帯端末一つでやらないとストレスを感じる時代になるに違いない」という。
その上で、「単純な判断や、多少の経験値を入れればできることはAIにやらせるようになってくる。日々の料金交渉もAIに任せるようになる。実際に我々もそういう風にシステムを組み替えている。あと1、2年の中で学習機能も相当精度が高まっていくので、運賃の判断とか、どのくらいの価格帯に設定して出していけば良いとかは、もう人間じゃなくてAIが判断する時代になってきている」とし、「人間がやるべきことは、人間じゃなければできないサービスアレンジやAIの育成・メンテナンスになるだろうし、仕事の仕方は切り替わっていく。今と同じ仕事をしていることはあり得ないし、5年以内に必ずそうなるだろう。人間を育てるようにAIも育成して、経験させて、適切な判断をさせていくようになる」と予想する。
システムだけでなく自動化も同様で、「成田にAGV、自動搬送機を導入していく。おそらく日本の航空会社の空港では初めてではないかと」という。
「貨物が着いたらトラックから下ろして航空機に積み込む、あるいは航空機から下ろしてトラックに積み込むなど、今は人間がフォークリフトを操作して動き回っている。そこには労力が必要で事故のリスクもあるが、それを機械がやってくれるなら、人間がやることは最小限になり、集中することができる。人間の行動範囲も狭められて効率もよく、事故の危険性もなくなっていく」と話す。
「運送上の契約書も、ようやく国内も国際も電子化されてきたが、まだ100%ではない。社内ではデジタル化やシステム化、自動化を進めているが、業界全体、フォワーダーの業務も変えていかねばならないし、変わっていくよう関係者たちに働きかけている」という。「そうやってデジタルな世界にマッチングしていけば、航空作業も捨てたもんじゃないと注目してもらえて、社会のために役に立てる産業だと思ってもらえる」と話す。
脇谷社長は、「すべてデジタル化して端末の中でやり取りができるように、まずは1年先のペーパーレスから始めたい。キーワードはやはり『デジタル化』だ」と語る。
◎関連リンク→ 株式会社ANA Cargo
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