国土交通省は、トラック運送事業者が運転者の健康状態の把握などを適切に行わずに重大事故を引き起こした悪質な違反を、行政処分の対象に追加する通達を発出し、6月1日から施行された。事業者の健康意識が高まりつつある中、何から行えばよいか分からないと嘆く事業者の第一歩として有効なのは、健康診断結果の活用はないだろうか。

ヘルスケアネットワーク(OCHIS)は、全ト協の健康管理支援事業「運輸ヘルスケアナビシステム」について、2020年度の結果をまとめた。健康起因事故につながりやすいハイリスク者を可視化するために、2018年から本格的に事業がスタートしたナビシステムだが、ドライバーの健康意識や運送事業者の指導などに少しずつ変化が見られている。

健康起因事故を踏まえた行政処分の強化に関しては、①事業者が事故発生日から過去1年間以内に法定の健康診断を受診させずに乗務させていた場合②健康診断受診結果に基づき、脳疾患・心臓疾患および意識喪失に関する疾病を疑い、要再検査や要精密検査、要治療の所見があるにもかかわらず、再検査を受診させずに乗務させた場合に、初回の違反には40日車、再度の違反には80日車の処分を下す。

「特に中小運送事業者にとって難しい、健康診断後のフォローから事後措置までをサポートする目的で、ナビシステムを構築している」と、OCHISの作本副理事長は話す。ナビシステムでは職種欄が設けられており、ドライバーと非ドライバーでは、ハイリスク者の割合がドライバーの方が高いなど、健康度の差も明らかになっている。

2020年度の結果を詳しく見ると、2017年度では重奏該当数が99個、1人当たりの星の数が3.3個だったものが、2020年度では重奏該当数40個、1人当たりの星の数は1.3個に減少している。在職者におけるハイリスク者を追跡すると、2017年度の44人が、2020年度は5人と大幅に減少した。

また、喫煙率も2019年度が約57%だったのに対し、2020年度は52.8%と減少が見られた。作本副理事長は「他産業に比べまだ喫煙率は高いものの、事業者の方の社員個人個人への禁煙を促すアプローチが、少しずつ功を奏しているのでは」と話す。その他にも、運動習慣がある人が増加する、加糖飲料を毎日飲む人が減るなどの変化も現れている。

ナビシステムで健診結果を分析することで病院受診率が上がるという、嬉しい結果も多数聞こえているという作本副理事長。「近年では、健康経営や『働きやすい職場認証制度』に取り組む事業者の方も増えている。経営者の方自信が健康に関心を持ち、メッセージを発信することで、社員の健康意識の向上につながる。社員の意識を変えることは難しい面もあるが、粘り強く取り組んでいただきたい」とコメントした。

◎関連リンク→ NPO法人ヘルスケアネットワーク(OCHIS)