高まり続けている低温配送の需要に、軽貨物事業者の多くが対応できずにいる。単価の良い低温配送に関心のある事業者は少なくないが、ほとんどの事業者は10台から20台のところで挫折してしまうという。冷蔵車両の価格が高い上、需要のある夏場に故障やトラブルが発生しやすくなるからだ。関東を中心に軽貨物配送を基軸とした物流サービスを提供しているH.A.S(埼玉県川口市)の蓮沼綾仁社長は、「当社は、軽バン商用車専門の車検や整備を行っているが、夏場には故障した冷蔵車の修理依頼が多くなる」と話す。

「当社も低温配送を請け負っているので、故障やトラブルには困っていた。コロナ後くらいから、低温配送の依頼が多くなってきているが、受けたくても車の問題で、対応できなかった」という。

そんな中、蓮沼社長は、大日本印刷(DNP、東京都新宿区)が開発した電源要らずの「DNP多機能断熱ボックス」に着目。軽貨物車両に最適な形にできないか相談を持ち掛けた。

DNPでは9年前から「DNP多機能断熱ボックス」を提供。輸送用や一時保管用などにパレットサイズやばんじゅうサイズなど、用途に合わせてラインアップを増やしてきた。蓮沼社長からの軽貨物配送向けのニーズを取り入れる形でDNPが設計と製作を行い、5月から販売している「DNP多機能断熱ボックス 軽貨物サイズ」は、各車両メーカーの荷室に収容可能で、保冷容量は1108リットル。30度環境下で品温8度を20時間キープすることができる。

軽貨物事業者は、冷蔵車を所有していない個人ドライバーの軽バンの荷台にこの断熱ボックスを設置するだけで、低温配送に対応できるようになるほか、CO2削減で環境問題にも対応できるという。

 

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