4月に全日本ライン(東京都千代田区)の社長に就任した大江慎氏。親会社であるファーマインドは青果物の流通を担い、生産者と消費者をつなぐ「理念を実現できる会社」で、その物流を担当するのが全日本ラインだ。「ファーマインドの意義を実現するのに重要な役割を果たすのが私ども全日本ライン」だと大江社長は話す。

 

同社長はこれまで、海外での仕事を多くこなしてきた。大学新卒でソニーに入社、ヨーロッパで商品企画・マーケティングに携わった。その後、北海道TVに移り、イギリスへの留学を経て、ヤクルト、ユニクロ、ローソンなどで海外事業の展開に携わってきたという。当時の国内は新卒採用の文化が根付いており、中途採用はまだまだ浸透していなかった。そうしたなかで、同社長は、中途で入り活躍するという異色の経歴の持ち主である。

同社長が親会社のファーマインドに入社したのは2017年。マーケティング部門で活躍してきた同社長が入社後に担当したのは管理部門の責任者。この4月には、新たに、ファーマインド社のセンター事業の責任者と、物流を担う全日本ラインの社長に就任した。

同社長は、「物流事業の環境は、人手不足をはじめとして厳しい状況。物流を物流会社単体で考える時代ではないのかもしれない」と現状の課題を指摘する。

 

ファーマインドや全日本ラインが携わる青果流通は、生産者から消費者の手に届くまで多くの手が加わる。現在は市場を通した流通が過半数を占めるが、そのなかでファーマインドは生産をはじめ、海外からの調達、加工、仕分け、貯蔵など国内の青果に関するあらゆることを担っており、「日本の青果が継続的に食を提供できる形を作っていくための物流を構築していく」と全日本ラインの立ち位置を理解する。

現在、ファーマインドが全国14か所で展開している青果専用センターは、半径約200kmで日本のマーケット全体をカバーできるように配置されている。これらの拠点を、荷物の中継や集約の拠点として活用し、2024年問題にも対応可能な物流網を構築できるのが、全日本ラインの強みだ。

 

同社長は「地域の特性によって、異なる物流の課題が存在するため、日本地図を眺め、既存のセンターと物流網を組み合わせて、量販店や生産者に対し提案を行っていく。今後、ニーズはさらに拡大し、今あるセンターだけでは足りなくなるはず」とし、今後もセンター運営を強化していくとしている。

 

同社長によると、現在、小売店は市場でも青果物を集めにくい状況だという。同社は全国にセンターを有することで、そうした量販店や小売り店に対し、具体的な提案が可能になる。また、ファーマインド・全日本ラインは、「青果物のコールドチェーンを通じて在庫をコントロールできることが強み」だと同社長は指摘する。

「物流が厳しい状況にあるからこそ、物流をトリガーにして成長できる」と語る同社長は、「そのためには輸送が重要で、どのように輸送効率を高めていくかが課題」と話す。

その課題解決の一つとして、4月下旬には北海道の札幌支店でトレーラ6台とトラクターヘッド1台を導入。道内から本州への輸送手段を、10トン車から最大積載量24トントレーラに切り替えることで、輸送能力を強化した。

深刻化する人材不足への対応にも取り組んでいくという同社長は、「人材の積極的な獲得や社員の待遇を上げていく必要がある」とする一方、「高齢化の問題に対応するために、ドライバーを辞めても働けるようなパッケージを作れる会社を組織するとともに、ITを駆使しながら輸送を体力がなくてもできる仕事にすることで、女性や外国人の人材を受け入れていく」としている。

「短期的には現在の売り上げ70億円を100億円にすることが目標」だと話す同社長は、「ファーマインドグループの理念の実現には、全日本ラインの役割が非常に重要」とし、「従業員一人ひとりの意識を高め、青果流通業界の課題解決に挑戦できる人材を育てていきたい」と話している。

 

◎関連リンク→ 全日本ライン株式会社