【質問】弊社は現在、ドライバーの給与に歩合給を採用しておりますが、年次有給休暇を取得した際の賃金の支払い方がよくわかりません。計算方法と注意点を教えてください。

 

2019年4月に年次有給休暇の5日間取得義務化が始まってから、年次有給休暇手当の計算方法についての質問が増えました。特に歩合給を含む賃金体系で複雑な計算になる場合があるため、わかりにくいと感じる経営者が多いようです。

年次有給休暇手当の計算方法は、労基法で3種類の計算が定められており、会社は就業規則に定めることで、自社に適する計算方法を選択することができます。計算方法は①通常の賃金②平均賃金③健康保険の標準報酬日額のうちから1つ選択します。固定給の場合は、ほとんどの会社が①を選択しています。固定給なので、年次有給休暇を取得しても欠勤控除をしなければ、通常の賃金を支払う扱いと同じ結果になるので、簡単だからです。ところが、歩合給の場合に①の計算を選択すると、「当月の歩合給総額÷当月の総労働時間×1日の所定労働時間」という計算をして、固定給とは別に支払う必要があり、計算が煩雑になります。また運転職の仕事は変動があり、たまたま歩合の良い仕事を担当したドライバーが歩合給の他に年次有給休暇手当も高くなるというダブルの不公平感が生まれることがあります。そのため、年次有給休暇手当に「通常の賃金」を使うことを躊躇う経営者がいます。

②の平均賃金を選択した場合は、「過去3か月間の賃金合計額÷過去3か月の総歴日数」と「過去3か月間の賃金合計額÷過去3か月間の労働日数×0・6」を計算して多いほうの金額を支払います。後者の計算は主に短時間労働者の場合に最低保障額を割らないように設けられています。①に比べると不公平感が薄まりますが、いずれにしても①と同様に、面倒な計算をその都度行わなくてはなりません。

一方、③の計算を選択した場合、健康保険料ですでに算出されている標準報酬月額を30で割った標準報酬日額を使用するため、年次有給休暇手当の金額が確定されており管理が簡便です。歩合給に対して不公平感がなく、従業員の納得感も得られやすいメリットがあります。ただし、③を使う場合は労使協定を締結する必要があります。「年次有給休暇手当の計算に関する協定書」は標準報酬日額を使用して計算する旨を記載し、労使が署名捺印する簡単な書面であり、労基署への届け出は不要です。

 

(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)