2020年代の総合物流施策大綱でも重点的に取り組むべき施策として、「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」が盛り込まれている。コロナを機に、デジタル化や標準化へ待ったなしの状況になったいま、どのようなことから取り組んでいくべきなのかー。

―なぜ、省人化・標準化が必要なのか?

小野塚氏:物流業界は、コロナの影響が有る無しにかかわらず、物流DXを進めていかなければならない状況になっています。昨年12月に国交省で、2020年代の総合物流施策大綱の提言がとりまとめられましたが、その中で重点的に取り組むべき施策として、物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)を掲げています。
コロナはあくまでもきっかけであって、そもそも人手不足が問題となっている物流の現場において、省人化・無人化を進めて、効率性を抜本的に高めていかなければ対応できなくなるからです。

―今後どのようになっていくのか?

小野塚氏:ゆくゆくはDXが進んで、物流のビジネスモデルが変わり、荷主にとっても便利な世界がやってくると理解しています。ですが、いきなり明日から変わるということは不可能なのです。

デジタル化や標準化といったつながる仕組みは、昔からやった方が良いと言われてきましたが、パレットの標準化や伝票システムのデジタル化などはこれまでずっと、できずにいるのです。

では、標準化やネットワーク化を実現するためにはどうすれば良いのかというと、先ず、省人化を進めることがポイントだと思っています。省人化が進めば必然的にデジタル化が進むのです。人間がやっている作業をロボットに置き換えるためには、作業内容の詳細をデータで入力しなければならないからです。

結果として、省人化から標準化、「なくなる化」に進む形で物流の革新というのが進んでいくのではないかと認識しております。ここで言う、「なくなる化」というのは、いろんなプロセスがつながって、仕組み化されると、色々な工程がいらなくなるということです。つまり、無駄が無くなるのです。

―省人化を進めるといっても、資本力が無ければ簡単にロボットなどを導入することはできないが?

小野塚氏:まず前提として、ロボットを入れる、入れないにかかわらず、確実にデジタル化が進みます。デジタル化は避けられないのです。例えば、取引先が伝票やファクスを使わないとなった場合、対応しなければならなくなるのです。けれども、デジタル化といった時に、大そうなシステムを構築しなければいけないのかというと、そうでもなく、スマートフォンやipadでもできるような仕組みに世の中がなってきているので、凄い投資はいらないのです。

今はアナログのままでいても、明日から仕事がなくなるかというとそんなことは無いと思うのですが、いきなり電子化に対応するというのは簡単ではないのです。なので、取引先や元請け先からいつ言われても良いように準備をして慣れておくことが大切なのです。

例えば、ドライバーには、印刷した紙で伝票を切ったとしても、データ自体は入力してデジタル化しておけば、あとで取引先からシステムに変えてと言われても、すぐに対応できます。つまり、守りの打ち手です。取引先からリクエストを受けたときに速やかに対応できるようにしておくというのがポイントです。

一方で、少しチャレンジして新しい仕組みやテクノロジーを入れましょうというときは、今度は攻めの打ち手になります。ですが、ロボットを導入した場合に、投資対効果があるのかどうかわからないことがあります。なので、中小の事業者は、まずは投資をせずに投資対効果が検証できるスキームをうまく使うのがポイントだと思います。

また、この手の新しいソリューションに対し、国も非常に力を入れているので、補助金などが付いているケースがあります。国だけじゃなく県レベルとか市区町村レベルで付いている場合もあるので、導入する前に相談してみるのもポイントだと思います。

ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志 氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2007年に欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーに参画。19年から現職。内閣府「SIPスマート物流サービス評価委員会」委員長、国交省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員などを歴任。

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