また痛ましい事故が起きてしまった。6月28日、千葉県八街市の路上で下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人が死傷。逮捕されたドライバーは、「昼食時に酒を飲んだ」と供述しているという。このトラックは白ナンバーだったが、一般紙やネットニュースが、事故を起こしたドライバーの勤務先を「運送会社」と報道。その親会社の関係者が「当社の運送子会社の従業員が…」と謝罪している映像も、テレビで繰り返し流された。

 

ネット上では、「杜撰な会社のせいで業界全体が『ならず者』の業種にされてしまう。 昔からなんでも『トラック』に一括りされているが、その内容は千差万別」「真面目に働く運送従事者にとって、業界全体のイメージが低下してしまうのはとても残念」「白でも緑でもアルコールチェックを義務化してほしい」といったドライバーの意見が飛び交った。「憶測で物を言うのはよくないが、昼食でお酒を飲んでトラックを運転するなんて常識では考えられない。 自社の荷物しか運ばないとしても、白ナンバーの会社の運行管理体制が厳しくなるきっかけになるかも」といった指摘も。

日本事故防止推進機構の上西一美理事長(ディ・クリエイト)は、「Yahoo!ニュースでもコメントしたが、事業許可の有無に関わらず、同じ殺傷能力のあるトラックを運行させているならば、ある程度の規制も考えるべきではないか。このような犠牲者が二度と出ないよう、ぜひ、自家用自動車の運行の前にも、体調確認やアルコールチェックの義務化を検討してほしい」と語る。

運送会社に勤務する事務員は、「お酒が好きなのに、癖にならないよう、休日も家で晩酌せずに徹底しているドライバーもいる。一部のいい加減な人の行いは許せない」と語気を強める。

道路に出れば、白でも緑でも大きく重いトラックであることに変わりはない。これ以上、悲惨な事故を生み出さないためにも、早急な対策が必要と言える。

 

飲酒運転防止上級インストラクターに聞く「アルコール依存症」

 

「勤務態度は真面目」「お酒が好き」「酒乱ではない」など、事故を起こしたドライバーについて様々な情報が交錯しているが、勤務中かつ昼からの飲酒ということで「アルコール依存症だったのではないか」という意見も出ている。

「飲酒運転防止上級インストラクター」の資格を持つトライプロ(東京都世田谷区)の高木宏昌社長は、「平成19年の道交法改正での厳罰化が非常に奏功し、安易な飲酒運転による事故は激減したが、今回のような故意犯とも思える事故は、法改正や運転者のモラル、周囲の努力だけでは限界があることを改めて示した」と指摘する。

「例えばエンジンが掛からない『アルコール・インターロック』など、強制的かつ機械的に飲酒運転を防ぐ方法以外に即効性のある対策はないが、導入コストとそれを誰が負担するのかの問題があり、一気に普及が進むとは考えづらい。後押しするような施策も必要ではないか」とも。

また、「アルコール依存症が疑われる、もしくは問題となる飲酒行動がある人が、もう少し的確に医療へとつながる仕組みも必要」とし、「従来は精神科が窓口ということで敷居が高かったが、昨今は内科医が主導する『アルコール低減外来』などもあり、間口が拡がっている」という。「そこでは一般的な治療方針の『断酒=酒をやめる』ではなく、『節酒=酒量を減らす』なども採り入れており、受診のハードルは低い」 。

高木氏は、「依存症の方は、自分に問題(病気)があるとは認めない、つまり治療につながらないため、周囲に違和感を感じるような方がいる場合、大きな事故を起こす前に、まずはそういったところに相談するよう促してほしい」と呼び掛ける。

(物流ウィークリー7/5号掲載)