新型コロナウイルスの第3波がようやく落ち着き始めた3月16日、児玉徹夫氏はアサヒロジ(東京都港区)の新社長に就任した。

児玉社長は1986年にアサヒビール入社の58歳。「入社時は、アサヒがコクとキレを追究したビールを開発し、下降気味だった売り上げも1987年に発売した『スーパードライ』の爆発的な人気でV字回復した、ターニングポイント的な年だった」と振り返る。「配属先は大阪の物流部で、4年間在籍した後、組合の専従業務を約5年間。この期間に人事や福利厚生のことなど、それまで触れることのなかった世界も体験し、閉鎖的だった価値観を広げることができた」と話す。組合の専従後はまた物流部に戻り、その後は物流畑一本を歩んできた。

2010年、アサヒビール本社の物流システム部長に就任。翌年に東日本大震災が発生、供給に特化した対応を迫られた。「この年、キリンビールとの共同物流が首都圏でスタートし、この頃から物流でも〝協調〟や〝連携〟がキーワードとなった。2013年末からはドライバー不足が表面化し、物流危機と言われて物流の重要性がクローズアップされた」。

アサヒビール本社の物流部に長年身を置き、グループの物流事業の川上で、その変容を見続けてきた児玉社長は、アサヒグループの物流現場の最前線であるアサヒロジの強みについて「①真摯に取り組む2300人の社員の潜在力②ロジスティクスの効率化や変革、物流環境の改善にチャレンジしているグループ事業会社の存在およびアサヒロジとの信頼関係や連携力③物流のインフラやベースカーゴ、全国の物流拠点のネットワーク」の3つをあげ、「物流費換算で600億円規模のアサヒグループとしての物流ネットワークや物流インフラがあることは大きな強み」と話す。「若い社員達はデジタル化の技術やプレゼンテーション能力に長けているなど、多様な能力を持っている。適材適所の配置や社内の変革風土の醸成により社員の潜在力を引き出したい」。

就任時に出したメッセージは3つ、「①失敗を恐れず、失敗を成長の糧にしよう②やる前からできない理由を並べず、できる方法を考えよう③壁は、知恵と工夫と協力で乗り切ろう」。児玉社長は、「変革にチャレンジする社員にはスポットライトを当てていくので、事例をどんどん本社にあげてほしい」と要請。「集まった事例は広報媒体に掲載したり、表彰制度につなげていきたい」と述べる。

また、「課題は『業務継承』。沢山の方が定年を迎える層があり、ここ数年で大きく社員の人材構成が変わる。ベテランに依存する業務運営体制から次世代を中心とする業務運営体制へと早々に移管していかねばならない。7年ほど前から社員の採用も積極的に行い、若年層も充実してきている若い社員が職場に配属されると一気に職場が活性化して明るくなる。若手社員の頑張る姿はベテラン社員たちに良い刺激になり、ドライバーさんたちも笑顔になる。チャレンジして失敗しても成長につながるような、大らかなOJTも必要かな、と」。(後編に続く)

◎関連リンク→ アサヒロジ株式会社