2026年度から九州地域で画期的な取り組みが始動します。「九州半導体人材育成等コンソーシアム」が2023年11月17日に発表した半導体関連企業の共同物流システム構築計画です。私たちの生活に欠かせない半導体産業において、複数企業が協力して輸送網を共有するこの試みは、業界に新たな風を吹き込むかもしれません。

 

計画の核心は、ソニーグループの物流拠点を中心としたネットワーク形成です。福岡県の鳥栖JC周辺の拠点を起点に、長崎・大分・熊本・鹿児島の工場を結ぶ日次輸送体制を確立。各地域内では巡回車両が集配業務を担当します。この構想は最終的に九州全域への拡大を視野に入れています。実証段階から5社が参画意向を示し、9社が関心を寄せている点からも、その期待値の高さがうかがえるでしょう。

 

なぜこうした連携が今求められているのでしょうか？近年の九州地域はTSMCの進出をきっかけに半導体産業が急成長しています。2021年度以降の投資総額は4.8兆円を超え、IC生産額も2024年には前年比13.8%増の約1.3兆円に達する見込みです。その一方で、ドライバー不足や燃料高騰により物流コストは上昇の一途。企業間で輸送リソースを共有することで、コスト削減と環境負荷軽減の両立が期待できるのです。

 

この取り組みが成功すれば、企業は開発投資に経営資源を振り向けられるようになります。また環境配慮型の物流システムは、海外企業からの投資誘致にもプラスに働くでしょう。しかし課題も残ります。これまで個別に輸送を委託してきた企業間の協力体制構築は容易ではありません。半導体産業の未来を左右するこの共同物流の行方に、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

 

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