ご閲覧有難うございます!
このお話は、ドラEVER 創設者、代表取締役社長、岡野照彦の実話を基にしたサクセスストーリーです。
毎月第一・第三月曜日に更新する予定です♪
社長岡野の波乱万丈のノンフィクション物語、楽しんで頂けたら幸いです。

著:Zuzu


第一話.岡野照彦という男

 シャンデリアが煌めく会場には、大勢の人で埋まっていた。

 心地の良い音楽が流れている。

 音楽がフェイドアウトをし、ライトの明かりが落ちると、会場のいたるところで交わされていた会話が止み、しん、と静まり返った。

 今日の司会を務めるアナウンサーが、耳に心地のいい声でプログラムの紹介を読み上げていく。

 

「――まずは、開会に先立ちまして、株式会社ドラEVER 代表取締役 岡野照彦より、皆様にご挨拶申し上げます」

 

 名を告げられて、俺はマイクの前へと進み出た。

 眩い程のスポットライトが当たる。

 目の前にいるのは、運送業界を支える社長や会長といった上層部の顔ぶれだ。

 俺は一度ゆっくり深呼吸をすると、真っすぐに客席へ視線を向ける。


「ただいまご紹介にあずかりました、株式会社ドラEVER 代表取締役 岡野照彦でございます。本日はお寒い中、ご来場いただき誠に有難うございます。無事開催でき、また今までにない大勢の方にご出席頂き、業界の輪が広がっていること、大変喜ばしく感じております――」


 俺は、岡野 照彦。歳は四十を少し超えたところ。

 七つの企業の創業者であり、国内シェアNo.1の実績を持つドライバー専門求人サイトを運営する代表取締役社長。それが俺の肩書きだ。


 これだけ聞くと、あたかも金持ちのボンボンのように思われそうだが、決して裕福な家庭に生まれ育ったわけではない。むしろ順風満帆には程遠い人生を歩んできた。


***


 両親が離婚をしたのは、俺がまだ三歳くらいの時だった。

 姉二人は父親に、俺は母親に引き取られ、小学校四年まで、祖父母の家に預けられた。

 従兄妹二人と祖父母と俺。母親は直ぐに出稼ぎに行き、滅多に会うことは出来なかった。

 スナックに隣接するプレハブのような平屋に、五人暮らし。

 金が無かったのか、それとも折り合いが悪かったのか。

 俺は保育園はおろか、幼稚園にすら行っていない。


 小学校に入学すると、すぐに自分が他の子供たちより遥かに遅れていると、嫌でも気づかされてしまった。

 何しろ、入学した時、他の子供たちが当たり前に出来るひらがなを読むことも、簡単な足し算さえも判らなかったのだから。


 プレスクールで、先生に「りんごが二つあります。ひとつ食べたら、残りは幾つでしょう」、と問題を出され、他の子供たちが声を揃えて「いちー!」っと元気よく答える中で、俺は目を白黒させていた。

 知っているのが前提で進むプレスクールに、全くついていくことが出来なかった。

 当たり前だ。集団生活も、読み書き計算も何一つ、教わったことが無いのだから。


 必死に周りの真似をして、食いついていこうと努力はしたが、スタートラインがそもそも違う。

 三年生になる頃には、授業に全くついていけなくなっていた。

 『親の離婚』『貧乏』『馬鹿』の三重苦。


 これだけでも大分重いのだが、ここから更に転落の人生を歩んでいくことを、この時の俺はまだ知らなかった。

 

 

to be continued…


次回更新は3/6を予定しています! お楽しみに!