運送業の「2024年問題」によって運送会社はどのような動きをするのでしょうか。漠然とした不安を感じている人がいるかもしれませんので、今回は今後想定される運送会社の動きについて考えてみたいと思います。

現在、運送会社と荷主は2024年4月から始まる改正労働基準法や新改善基準告示を遵守しつつ、日々の物流を止めない為にいろいろな対策を検討している最中です。以下に挙げる内容が今後、運送業の現場で表れてくるでしょう。



①先ず待機時間の削減から始まる
今、運送会社が最優先事項として荷主と交渉している内容が、「待機時間の削減」です。待機時間は荷主都合で発生する最も無駄な時間であり、運送会社単独で解決できない問題です。
政府もこの問題を重視し、国土交通省による荷主勧告制度(社名公表を含む)や労働基準監督署による荷主への直接要請などの対策を打ち出しています。荷主側もこの動きを無視できなくなり、今後は待機時間が少なくなると見込まれます。

②長距離運行は中継輸送が主流に
トラクターとトレーラーを途中の中継地点で交換し、2名が交代で長距離輸送を担当する形式に変化していくことが予想されます。すでに大手運送会社は取組を始めており、一部の中小運送会社でも同業者と協業した取組を開始しています。
中継輸送に移行した場合、ドライバーは発地から250㎞程度の地点で中継し、そこから折り返して日帰りで戻る運行に変わります。


③車両の大型化が進む
労働時間が削減されることから、一度に大量の荷物を運ぶことで効率アップを図る動きが出ています。資金力のある運送会社から取組が進み、車両の規制緩和がさらに進めば、今後、大型トラックからトレーラーへの移行、連結トラックやスワップボディコンテナ等の導入の動きなどが加速するでしょう。

④長距離から地場の仕事にシフトする動きが出てくる
労働時間の規制強化により、長距離運行が難しくなり、地場(約100㎞以内)や中距離(約200㎞以内)の仕事にシフトする動きが出始めています。中継輸送が困難な運送会社の中には長距離運行から撤退する会社も出てくるでしょう。

⑤賃金体系の見直しを検討する会社が出てくる
労働時間短縮に伴い賃金が減少するケースが生じると、ドライバーの離職を引き起こす可能性がある為、賃金体系を見直して、現行の賃金水準を維持しようと考える運送会社が出始めています。
単純に固定給を上げてしまうと、同じ仕事を長時間かけて行う不慣れな社員の方がより高い賃金になるという不公平感が増すことになるため、実績に応じた業績給を導入し、現行の賃金総額を下回らないように保証しようとする会社も出ています。2024年問題を契機にして、賃金体系の改定を模索する動きが出てくるでしょう。

⑥出庫時刻の指示や運行計画の見直しが進む
出庫時刻をドライバー任せにしていた運送会社は今後、会社が出庫時刻を明確に指示することで拘束時間を抑えようとするでしょう。また、今後は法令順守を最優先とした運行計画の見直しが進む見込みです。運行ルートの変更や配送先の集約化、休憩地点の変更、高速道路の利用促進、などの動きが出てくるでしょう。さらにバース予約受付システムや最適配車システム等のIT化が急速に進む見込みです。



以上、「2024年問題」によって運送会社で起こると想定される動きについていくつか挙げてみました。これらの内容を参考にして「2024年問題」の意味を理解し、心構えをしておきましょう。