この記事の要約

公正取引委員会が運賃見直しとドライバーの給料向上に役立つ理由

公正取引委員会(公取)は、独占禁止法や下請法を守るための組織で、企業が不公平な取引をしないように監視しています。
最近、公取は運送業界での「優越的地位の乱用」(大企業が中小企業に対して不公平な条件を押し付けること)を厳しく取り締まっています。

  • 1.公取は、不公平な取引をしている企業を調査し、違反があれば罰則を科します。
  • 2.荷主や元請事業者が運送会社に対して不公平な条件を押し付けることを防ぎます。
  • 3.公取が企業名を公表すると、大企業はブランドイメージが傷つくため、
    運賃交渉に応じるようになります。

このようにして、運送会社が受け取る運賃が上がり、その結果、ドライバーの給料も上がります。公取の活動が、運賃見直しとドライバーの給与水準向上に大きく貢献しているのです。


皆さんは公正取引委員会についてご存じでしょうか?

国土交通省や厚生労働省などの省庁に比べてあまり馴染みが無いと思いますが、公正取引委員会とは内閣府の外局にあたる行政委員会で、主に独占禁止法や下請法の適正な運用を監視する独立した組織です。

市場経済が十分に機能するためには、常に公正で自由な競争が維持されなくてはなりません。公正取引委員会は番人として自由経済を守っているのですね。


公正取引委員会は違反行為が疑われる企業に立ち入り検査を行う権限を持っており、違反が判明した場合にはその行為を止めさせる排除措置命令や不当な利得を返還させる課徴金納付命令を発出する権限があります。
企業にとっては大変怖い存在なのです。



実はその公正取引委員会が、皆さんが勤務している(又はこれから勤務しようとしている)運送会社に対して力強い支援者になっているのです。以下でその理由をご説明いたします。


公正取引委員会は独占禁止法の適正な運用を監視する行政機関であり、その監視する対象の一つに、「優越的な地位の乱用」という中小事業者に不当な不利益をもたらす行為があります。
「優越的地位の乱用」とは、取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者がその地位を利用して不当に不利益を与えることであり、独占禁止法により禁止されています。


運送業界で優越的地位と言えば、もうお分かりいただけると思いますが、運送会社に対する荷主や元請事業者が監視の対象になっています。


公正取引委員会は近年、荷主や元請事業者の監視を強化しており、2022年12月27日には優越的地位の乱用につながる恐れがあるという理由で13社の社名を公表しました。
また本年3月15日には再び同様の理由で10社の社名を公表したのです。


公正取引委員会は一回目の社名公表以降も継続的に地道な調査を行っており、優越的地位の乱用に対して極めて強い姿勢で臨んでいます。


それまでは公正取引委員会など無縁の存在だと考えていた一部の荷主さらに2023年11月29日には「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を発表し、指針の中で「受注者から要請が無くても、発注者側から価格交渉に関する協議の場を設けなくてはならない」「公表資料に基づく要請に対しては合理的で根拠があるものとして尊重しなければならない」等の行動を発注者側に求めています。
元請事業者は大変驚き、いよいよこれからは運送会社との運賃交渉に応じていく必要があると認識を改めるようになりました。


荷主にあたる大企業や中堅企業にとっては、社名を公表されマスコミ等により社会に周知されることは会社のブランドイメージを大きく毀損するため絶対に避けたい事態です。
公正取引委員会による社名公表は荷主や元請事業者を本気にさせた一撃だったと言うことが出来ます。


一方、下請法に関しては、荷主と運送会社の関係が直接下請関係とはいえない為、現在は監視対象になっていませんが、今後は見直す方向で検討されており、来年以降には下請け法違反の対象として荷主が監視されることも予想されます。


運送会社が収受する運賃や料金が引き上げになれば、ドライバーの給与水準を引き上げることが出来ます。
実際に運賃が改善した運送会社の多くが賃上げを検討または実施しており、ドライバーの労働条件改善に向けて、公正取引委員会の存在は極めて大きい効果をもたらしていると言うことができます。

皆さんもこれからは公正取引委員会が運送業界に与える影響を理解し、その活動に期待してください。