4月にヤマトホールディングス(長尾 裕社長、東京都中央区)が発表した今年3月小口貨物取扱実績の内、宅配の今期累計は前年比16.5%増。SGホールディングス(荒木秀夫社長、京都市南区)が7日に発表した2021年3月デリバリー事業の取扱個数実績は前期比12.7%増。人手不足問題などが取り上げられながらも、需要が絶えない宅配業界。コロナ渦で様々な業界が業績を悪化させる中でもライフスタイルの変化を受けてEC事業などは高い成長を見せている。2021年度の宅配戦略について取材した。

ヤマトホールディングスはこれからの取組みの一つに、ECエコシステムをあげている。

今年度も、昨年スタートしたEC事業者向け配送商品「EAZY(イージー)」および同サービスの配送パートナー「EAZY CREW(イージークルー)」の拡充に注力していくようだ。

ヤマトホールディングス社長室シニアマネージャー兼ヤマト運輸EC事業本部ゼネラルマネージャーの齊藤泰裕氏は「宅急便は発送・受け取り双方に対応可能なアナログなコミュニケーション能力が必要となるが、ECなら購入者と受け取り者が同一の場合が多いため、受け取り側に特化したコミュニケーション能力が求められるとイージークルーに寄せられる期待を話す。それぞれのニーズに対応した配達を模索・最適化することで「新たな物流エコシステム」の確立に向け進んでいく模様。昨年秋に実証実験が発表されている3輪電動自転車を活用した宅配事業も、本格実装およびリースに向けた動きがあるそうだ。

加えてイージークルーとなったパートナー協力企業にはグループの資源を活用し、労働環境の向上に力を注いでいく他、イージークルーが利用する宅配アプリの開発・改良から置き配の拡充、更には短時間の労働環境構築などを通じ、ドライバーの労働環境改善を模索していくという。

 

セイノーホールディングス(田口義隆社長、岐阜県大垣市)は2020年にラストワンマイル推進室を設置。近年は買い物弱者対策としての買い物代行、弁当宅配などを展開してきた。2021年は独自のドローン重心制御技術「4D GRAVITY」と、ドローン配送をメイン事業とする戦略子会社「NEXT DELIBERY」を持つエアロネクスト(田路圭輔CEO、東京都渋谷区)と共に無在庫、無人化を実現するスマート物流事業化に向けた業務提携開始を発表。山梨県小菅村から、ドローン物流と陸上貨物輸送およびドローンスタンド・デポを連携させたスマートサプライチェーン「SkyHub(スカイハブ)」の展開を控えており、今年中には社会実装を見込んでいる。

ラストワンマイル推進チームを率いる執行役員の河合秀治氏は今後について「既存の物流インフラから溢れた貨物をどうすればいいのかという問題は依然としてラストワンマイルの大きな課題」としている。

同氏は今後の展開について、宅配企業同士のシェアリング推進に期待を寄せる。「現在展開されている共同配送だけでなく、ソフトウェアやドローンをはじめとした機体の開発など、お客様と現場を助けるためにも可能な部分は共同で取り組んでいく必要があるのでは」とのことだ。

大手物流企業が各地で活躍を見せる中、ラストワンマイル事業へ参入する動きもある。フードサプライ(竹川敦史社長、東京都大田区)は元々飲食店をメインに直接食品配送を行う卸の事業者として業界内でネットワークを持っていたが、新型コロナウイルスの流行に伴う飲食店の営業時間短縮および閉店を受け、東京23区を対象とした食品宅配サービス「センチョク」を昨年春から4社合同でスタートさせている。更にデリカフーズホールディングスと提携し青果日和研究所を立ち上げ大手宅配企業に委託し全国へ青果物を展開している。

なお、23区を対象としたセンチョクは、同社の自社配送を担当していたドライバーが宅配も務めている。宅配研修を経た自社ドライバーのみで固めたことで、商品説明・サービスの訴求などの対応力を総じて高めることができ、サービス・商品の両面で消費者の評価を獲得。サービス開始から約3倍の売り上げを記録しているという。

センチョク事業部の向井昇係長は「元々は飲食店の消費量減少にあわせて発足したセンチョクだが、感染症流行により宅配需要が高まった新しいライフスタイルが普及した。お客様には引き続きセンチョクを通じて魅力的な商品をお届けしていく」としている。同サービスは顧客の増加に伴い参加企業も増加中。従来の食材をメインに扱う企業だけではなく、外食企業も手を挙げており商品ジャンル拡張が続いているとのことだ。

◎関連リンク→ ヤマトホールディングス株式会社

◎関連リンク→ セイノーホールディングス株式会社