トラックドライバーはこれまで、仕事柄、感染しにくい職種と言われてきたが、オミクロン株による感染拡大は、こうしたドライバーへも身近なリスクとして近づいてきている。なかでも大きな要因はドライバーの家族間での感染で、同居する親族から感染するケースや濃厚接触者になるケースが出てきている。政府は、社会活動を止められないとして、社会機能維持者への対応の緩和、濃厚接触者の待機期間の短縮などを進めるが、こうしたなか、その対応をめぐって、荷主と見解が合わず、苦慮する運送事業者もいる。

首都圏で食品輸送を手掛ける運送事業者では、ドライバーに感染者と濃厚接触者が合わせて10人いるという。

同社では、他のトラックで代用し、できなければ荷主に欠車を依頼。「コロナ感染が身近に迫っていることは荷主にも理解が広がっているので、そこはなんとかしのげている」というが、国が定めた濃厚接触者の待機期間を荷主が認めないため、ドライバーを復帰させられない状況と嘆く。

「10日間はうちの仕事をさせないでくれ」と荷主から直接言われた同社は、国の基準を持ち出したものの、慎重な対応を求める荷主の姿勢は変わらず、結局10日間の待機期間を迫られている。

「優越的地位の乱用かもしれないが、従わなければ、『お宅とは取引しない』と、契約を切られるだけ」という立場の同社は従わざるを得ない状況で、「人手不足が続くなかで、ドライバーが抜けた穴を埋めるのは大変。1日でも早く戻って来て欲しいが、戻せないのは正直痛い」と同社長は嘆く。

そのうえで、「国が決めたなら、それに従うようにしっかりと周知徹底してほしい」と指摘している。