冬場の足元チェック 使用限度どう考える
国交省は昨年12月に冬用タイヤの未装着などによって雪道で立ち往生した場合、その車両を保有する事業者に対して指導・行政処分を実施する可能性を示した。さらに今年1月には、輸送安全規則の解釈・運用の一部改正で、事業者が冬用タイヤの安全性を確認することがルール化され、今シーズンから本格運用が始まっている。慣れない土地での運行に、近年の異常気象による大雪が重なり立ち往生することも想定されるが、そのような事態を避けるために事業者はどう対応すればいいのだろうか。
先の一部改正は、雪道を走る際の冬用タイヤの溝の深さが、メーカーが推奨する使用限度よりすり減っていないことについて整備管理者、運行管理者のダブルチェックが必要になったもので、近年各地で発生した積雪での大型車の立ち往生を踏まえた措置だ。通達部署の一つ、自動車局整備課の担当者は「規則の解釈の一部変更ということで貨物、旅客運送の業界団体に内容を通達したほか、タイヤメーカーの業界団体と情報共有した」という。
メーカーが推奨する使用限度の目安として「溝の深さが新品時の50%まですり減った際に(冬用タイヤの使用限度である)プラットホームが溝部分の表面に現れる」とある。ちなみにブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム、TOYOTIREの各社に聞くといずれも使用限度としてこれを肯定する回答があった。
プラットホームは、何キロ走行すると現れるのか。タイヤメーカーの業界団体・日本自動車タイヤ協会(東正浩会長、東京都港区)の整備部担当者に話を聞くと「特にトラックは車ごとに走行距離や使用環境が違うので、一律の調査はしていない」という。運送現場でも同じ認識で、冬用タイヤは走行距離ではなく「寒冷地に行く車は、毎シーズン新品に履き替える」。プラットホームが出た後はノーマルタイヤとして使うこともよくあることで「フロントは毎年新品を履き、3シーズンかけて後輪に回していく」(いずれも広島県内の事業者)という。
同県南部の事業者は「法的に6日間出っぱなしの運行が可能な中で、例えば温暖な広島から静岡へ行った後、急きょ北陸へ走ることになった場合はどうすればいいのか」と疑問を口にする。これについて同局安全政策課に聞くと「出先で運行の変更が想定される場合はあらかじめ準備するべき。また、会社が急な変更を指示せざるを得ない状況ならば対策を講じた別の車両に仕事を振るか、出先で整備してもらう」と見解を示している。
なお、対象になるタイヤについて同課では「駆動輪とは限っていない」とし、万一立ち往生した場合には、装着する全てのタイヤについて、事業者が適正な状態であるか確認していたかが問われることになる。
年末年始は、積雪や路面の凍結に特に注意しなければならない時期。事業者は適正な滑り止め対策をした冬用タイヤを装着しているかを改めて確認し、社内で情報共有したい。
なお、直近6時間に積雪で深刻な交通障害が起こる恐れがあることを伝える「顕著な大雪に関する気象情報」の運用が近畿・中国地方にも拡大されるなど、雪に関する予報は実用的な情報に変わってきている。寒冷地を走る場合には気象情報を小まめにチェックすることもも必要だ。
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