埼玉県川口市の運送会社で、夜積みし、車庫に止めていたトラック9台の荷台から家電などの商品が盗難されるという事件が発生した。

防犯カメラには、荷台から家電を盗む犯人の姿が映っていた。盗んだ荷物を運ぶためのトラックをあらかじめ準備したり、荷台をスムーズに開けたりするなど、手際が良く、用意周到なその手口に、被害を受けた運送会社社長も憤慨するとともに驚きを隠せない様子。

今回の盗難では、手際のいい犯人の手口もさることながら、積み置きしなければいけない背景や簡単に開けられる荷台という課題も浮き彫りとなっている。

 

事件が発生したのは9月26日、日曜日の深夜1時から3時の間で、川口市の運送会社が、事務所から数キロ離れた場所に借りている車庫で発生した。

柵越しに並べてあるトラック9台の荷台が次々に開けられ、積んでいたエアコンやテレビ、冷蔵庫など家電22点が盗まれたという。

同社社長によると、土曜日から日曜日にかけては、トラックは基本的に車庫に止められており、車庫は無人状態なのだという。

事件当日の夜もその状態だったようで、日曜日の朝に出社したドライバーが異変に気付き通報した。

同社では車庫に数台の防犯カメラを設置しており、そのカメラには犯行の一部始終が映っていた。

取材の際に記者も見せてもらったが、出入口にある防犯カメラだけを避けてはいたが、盗難した荷物を積むためのトラックを車庫に乗り付けたり、9台のトラックの荷台を次々に開けたりするその手口は巧妙かつ大胆で、防犯カメラには、家電を運び出す3人の姿が映っていた。

同社では従来、防犯上の問題もあり積み置きはしていなかった。しかし、労働時間の改善に取り組む上で積み置きは、どうしても避けては通れなかったという。

これまで、朝に荷物を積みに行き、それを納品して終わるという業務にしていたが、朝積みに行くことで労働時間が長くなってしまうため、朝から納品し、納品が終わった後、翌日の荷物を積み込んで翌日まで積み置きするスタイルに変更したのだという。それが今回、仇となってしまった。事件前日の土曜日の夕方に積んだ荷物は、翌日の朝まで車庫にとどまることになる。今回、そこを狙われてしまった。

さらに、今回の盗難では、新たな問題を浮き彫りにした。

それは、トラックの荷台が簡単に開けられてしまったという問題だ。

同社のトラックは、ゲートで荷台が閉まるマルチゲート式のトラックだった。同タイプのトラックは、油圧を利用してゲートで荷台を締めるというタイプで、油圧が機能しなくなると、荷台は簡単に手で開けられる。犯人は、油圧ホースを切断することで、荷台を簡単に開けた。

 

このやり方で9台のトラックの荷台を次々にこじ開け、エアコンやテレビなど家電22点を盗んだ。同社によると、車両の修理も含め、被害総額は250万円に上るという。

同社では、門扉を付けるとともに、セキュリティ会社との契約も進めていくとしている。

防犯カメラに犯行の一部始終が映っていたこともあり、民放テレビの取材が入り、全国ネットで放送された。

第2、第3の犯行を防ぐためにも犯人の特定が急がれるが、顧客から預かる大切な荷物を守るためにも防犯対策の強化は不可欠だといえる。