トラボックス吉岡会長が退任 新会社立ち上げへ 「運送業界に恩返しをしたい」
トラボックス(東京都渋谷区)の創業メンバーとして、25年にわたり物流業界と深い関わりを持ってきた吉岡泰一郎氏。今月8日付けで同社会長を退任し、新会社の設立を計画しているという。「長年お世話になったトラック運送業界へ恩返しをしたい」と話す同氏に話を聞いた。
「トラック新法の影響で、今後は運送会社、そしてトラックドライバーの数が減っていくだろう」と切り出す吉岡氏。「2030年には34%の荷物が運べなくなるという試算もあるように、ドライバーが減ると大変なことになる。だからこそ、ドライバーの皆さんが業界に残れるようなお手伝いがしたい」と新会社への思いを明かす。
新たに立ち上げる会社の名前は「ワンロジ株式会社」。これまでに培ってきた人脈の中から、志を同じくする仲間数名と始める。「意味は、ワンチームのロジ。中小運送会社の皆さんともう一度向き合って『みんが幸せでうれしいね』という形を作っていきたい」。

新会社では、「主に4つの事業を柱に据える予定」だという。ひとつ目が、運送会社の経営改善を目的としたアドバイザー業務。昨年、54歳にして大型免許を取得した同氏は、「自分で免許を取ってみて初めてわかったが、免許を持っていても大型は怖い。『大型に乗りたい』と言ってくれるドライバーをもっと大切にすべき」とし、「ドライバーが活躍できる場である運送会社の生き残る術を経営者とともに模索していきたい」と語る。
具体的には、「資金調達や返済方法の見直しなどの財務面のアドバイスだけでなく、M&Aを提案することもあるかもしれない」とし、25年の業界経験に加え、前職の銀行員時代の知識も活かしていく。「複数の運送会社が集まってホールディングス化することによる管理コストの削減やドライバーの最適な配置なども提案したい」とし、「もちろんM&Aが目的ではないし、その後のフォローもきっちりと行っていく」という。
2つ目は、「安全面の強化やDX化、もちろんトラボックスの活用も提案していく」とし、「事業許可の更新制を見据えたGマークの取得支援など、中小運送会社の社長さんと膝を突き合わせて、地道にやっていきたい」。
3つ目がイベントやセミナーの支援。さまざまなイベントで講師やモデレーターとして登壇する機会が増えているが、「運送経営者や後継者に積極的に参加してもらえるよう、盛り上げていきたい」。
最後の柱は顧問業務で、すでに複数の運送事業者から声がかかっているという。
退任日となる今月8日には、89回目にして最終回となる「トラボックス東京交流会」が開催されるが、定員500名が早々に満席となった。吉岡氏は、交流会スタート時の労苦に思いを馳せながら「これだけ大きな規模になったことは大変ありがたい」と感謝を口にする。
「在宅勤務になり、やることがなかったコロナ禍ではゴルフをしても楽しくなかった」と苦笑する吉岡氏。「しっかり仕事をして、その合間にゴルフに行くから楽しいことが分かった」とし、「死ぬまで働く」と宣言。新会社へとステージを変え、運送業界での活躍と貢献はまだまだ続く。
