夜間の競艇場バスターミナルをトラックに開放 路駐起因の死傷者数0人達成
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トラックドライバーにとって休憩場所の確保は喫緊の課題だ。路上駐車は交通環境を悪化させ事故を誘発するだけでなく、取り締まりが行われドライバーが摘発されるなど業界への視線は厳しさを増している。埼玉県戸田市では、行政、荷主企業、そして物流業界団体が一体となり、平成15年に戸田市貨物自動車等路上駐車対策協議会(飯島典常理事長)を結成。戸田競艇場バスターミナルの夜間開放を実現させ、今年まで路上駐車に起因する死傷者数0人を達成している。
時間外労働の上限規制が強化された今、倉庫近辺で待機するドライバーや所属先企業の心理として、「荷待ちの列に並ぶ時間を減らしたい」と思うのは当然のこと。しかし、突き詰めれば多くの路上駐車は荷主企業の都合で発生しており、運送業界のみでの対応には限界がある。地域の産業を支える物流産業の振興と、交通安全を両立させるには自治体、荷主、物流と業界の枠を超えた包括的な取り組みが必要だ。
同協議会は当時、地域の課題となっていた路上駐車中トラックへの追突事故を防止するため、物流業界団体が主体となり設立された。設立には、物流業界だけでなく地域課題の解決を目指していた警察署、市、競艇組合が戸田競艇場バスターミナルの夜間開放に合意し、管理主体になれる機関が求められていた背景があり、同協議会はまさしく、物流業界が行政と密に連携を取り地域課題に向き合ったからこそ生まれた機関といえる。
同協議会は設立後、物流企業だけでなく、市、市民団体、銀行、警察署、荷主企業、そして協議会の趣旨に賛同する一般市民個人にまでも会員の枠を広げ、業界の枠を超えた活動を目指している。交通事故防止に加えてアイドリングによる騒音問題の解決、そしてドライバーにとっても大型トラックの駐車が可能で、かつ、トイレも併設された休憩場所の創出となり、あらゆる方面に利益を生む取り組みとなった。
バスターミナルの夜間利用者は、会員企業の物流施設へ訪れるトラックドライバーだけでなく、すべてのトラックが対象となっている。駐停車するトラックは無償で利用可能となっており、協議会の運営経費は会員各社1万円の年会費でまかなっているが、基本的に収益性はなく、必要最低限のコストで交通環境と物流環境の改善に寄与する形となった。
飯島理事長は「現在、年間約6000台程度の路上駐車を吸収し、事故の抑止効果をあげている。これらの成果は、協議会のメンバーだけでなく、市民の皆様、関係するすべての方々の支援と協力の賜物」としている。
同競艇場でドライバーに夜間駐車開放について尋ねると「夜間はトラックで一杯になる。自分も安心して休憩できる場所があって助かっている。他県でも倉庫街の近くに安心できる駐車スペースが増えてもいいのでは」と答えてくれた。