働き方改革などにより育児休業申請を行うドライバーが今後増えてくると予想される中で、育児休業申請に対応する契約書類などを作成している会社は、まだ少ない。

育児休業とは、原則1歳未満の子どもを養育するための休業で、育児・介護休業法という法律に定められている。

令和4年10月からは同法の改正により「産後パパ育休(出生児育児休業)」制度が創設され、育児休業とは別で、産後8週間以内に4週間を限度として、2回に分けて取得できる休業が加わっている。

大阪労働局指導課に、トラックドライバーが相談に来た件数について尋ねると、「職種別で計上しておらず不明であるが、当局が発表する令和5年度の育児・介護休業に関する相談件数は、大阪で7件あり、例年より減少傾向だが、今年度も、さまざまな相談を受けている」と説明。

大阪市の社労士は「運送会社から、育児休業についての相談は今のところないが、今後増えてくる可能性は十分にある」と指摘。

「現状、育児休業を申請する上で、契約書類を作成し、契約を結ぶことが大事になる。例えば、休業中に、ほかの従業員が代わりに業務を行うため、業務復帰の際に以前の車両、業務に戻れない可能性も出てくることや、給与面にも変化が出る可能性があることを書面に残して契約することで、会社も従業員も納得の上で育児休業が取得できるようになる」と語った。

育児休業を取得する男性ドライバーたち

ミネライン(趙基峰社長、愛知県犬山市)は昨年9月~10月の2か月間、男性ドライバーに育児休業を取得させた。

同社員は第一子が誕生したことをきっかけに育児休業を取得。県の助成金を活用することで、会社に負担はなかったという。

当時、趙社長は「法律施行以前は『男』が育休を取るという発想が全くなかった。だが今の時代、男女関係なく子育てをすることが当たり前になっている。男性が育休を取ることで、奥さんの苦労、子育ての大変さを理解し相手の立場になって物事を考え自発的に行動できる人間になるのでは」と話しており、男性の育児休業を取得する動きを歓迎した。

マーメイドデリバリー(野口朋仁社長同半田市)の男性ドライバーは今年4月末~5月の約1か月間と8月の半月(2週間)の2回に分けて育児休業を取得。「当事者は言い出しづらいだろう」と考えた同社では育休取得を会社側から提案した。

同社は新卒採用を積極的に進めており、今回の育休取得は会社のアピールポイントにもなると期待する。

松岡拓弥主任は、「新卒採用するということはライフステージが変わる若手社員がいるということ。性別にかかわらず育休が取れるという前例を作れば、ほかの社員も安心して働ける」と話す。

 

男性の育休取得実績がない企業 61%が「就職したくない」

厚労省はこのほど、「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」が実施した「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」の結果(速報値)を事業主に向けて公表した。

同調査によると、若年層は77.9%が仕事とプライベートの両立を意識。また、「仕事と育児も熱心に取り組むつもり」と答えたのは男性87.9%、女性85.9%でほぼ同率の結果となった。

育休制度の認知度は「知っている」が92.4%、「取得意向」が87.7%。男女とも9割近く(88.6%)が「配偶者に育休を取得してほしい」という意向が確認された。

さらに、育休の希望期間は男性の約3割が「半年以上」で、「1年以上」の男性も16.0%と、長期間の育休を望んでいることが明らかになった。

就職活動での企業選定の際は、69.7%が「育休取得実績」を重視していると回答。さらに、「男性の育休取得実績がない企業」に対しては、61.0%が「就職したくない」と回答した。

また、就職活動で、「企業からどのような結婚や出産に関わる情報があると就職したい気持ちが高まるか」という問いに対して、「男性の育休取得率」と回答した割合が3割超と最も高くなった。育休取得率が高い企業に対しては、「安定している」(41.5%)、「社員思い」(39.3%)、「先進的」(22.6%)、「若手が活躍できる」(21.5%)などポジティブなイメージを抱いていることが分かった。

一方、結婚や子育てのハードルは、男女ともに「お金の問題」が最も高いが、2位以降の回答に男女差が見られた。男性は4番目に「自分の働き方」を挙げ、女性は2番目に「相手の働き方」を挙げている。

つまり、男性が自身の働き方を考える以上に、女性は相手の働き方が結婚、子育てを考える上での鍵だと考えていることがうかがえる結果となった。