第14回:「物流業界のMA全般で財務の観点から論点になりやすい点2」
皆様こんにちは。経営承継支援M&Aコンサルタントの村橋秀一です。M&Aでは、通常、買い手による調査(DD)が実施されますが、中小企業では買い手・売り手双方にとって初めての経験である場合が大半で、戸惑われる方も多いです。連載第11回では、「公認会計士による財務・税務DDで提出する資料の準備が必要」と説明しましたが、今回は具体的にどのような資料を準備する必要があるか一例を紹介します。
まず、①財務全般に関する資料②貸借対照表・損益計算書に関連する資料③税務に関連する資料に分類できます。①のうち主なものは、過去3年程度の決算書資料一式(BS、PL、注記表、付属明細、勘定科目明細、月次試算表、総勘定元帳)です。このうち、BS、PL、注記表、付属明細、勘定科目明細は法人税申告時に必要となるため、PDFですぐに準備できると思います。月次試算表と総勘定元帳もPDFで提出できますが、可能な限り「エクセル」で準備することが重要です。会計ソフトからエクセルですぐに出すことができるか事前に確認しておきましょう。
また、資料の質的な観点では、「勘定科目明細、総勘定元帳の摘要欄が適切に作成されているか」という点にも気を付けてください。これらの情報は、「重要な取引先がどこか」「滞留債権債務がないか」「私的な費用利用がないか」等を初期に判断するうえで重要な要素となります。
②に関連する資料は、資金繰り管理表、売上債権の年齢表、在庫一覧表、固定資産台帳、借入金一覧表、取引先別売上明細、仕入れ明細等の明細資料が該当します。また、これらの根拠資料として、「金融機関との金銭消費貸借契約書」「得意先・仕入先との取引契約」といった資料の開示も必要になりますので、一覧の有無、保管状況を確認しておくと良いでしょう。
③は、基本的に法人税申告書、消費税申告書を3年程度提示すれば足ります。税務は資料の提出以降のインタビュー対応が重要になりますので、事実関係を整理しておいてください。例えば、「税務調査が最後に入ったのはいつか」「その際の指摘事項は何であったか」といった点がすぐに回答できるよう整理しておくと非常に効率的です。また、直近5年以内に顧問税理士の交代等があった場合、過去の経緯の引継ぎができているか確認しておきましょう。
管理面の整備まで手が回っていない会社も多く、どこに何をファイルしたか、どういった資料を準備できるかを把握されておらず、資料準備が難航してしまうケースが散見されます。ぜひ一度、棚卸を行い、どういった資料があるかを確認のうえ、目録・索引の作成、ファイリングのやり直し等をしておくことをお勧めします。
村橋秀一(公認会計士)
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