【管理職編】61

「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。

今号も前号に続き「所長・管理職」をテーマに求められる役割、責任等に関し解説してまいります(その10)。
前号に続き所長・管理職によるトラブル事案等について説明してまいります。

1.所長による横領
所長による業務上横領等の事件が発生しています。荷主の営業担当者、協力会社の社長が結託、数年に渡って会社の金をプールし、3社で分配していたという事案があります。

未払残業請求事案と共に信頼関係があると考えていた所長に裏切られることは、経営者の精神的なダメージが非常に大きいです。

業務上横領事案は、概ね荷主、協力会社と内密に事を進めているパターンになっています。

また、タイヤ業者、整備業者と結託していた事案もあります。

不正が起こる背景として一般に「動機」「機会」「正当化」の3つがあるとされています。

まずは、金銭的な要因があったという「動機」です。やはり金銭問題を起こす社員は経済的な問題を抱えているケースが多く、所長も例外ではありません。入社の際に「入社前事前確認書」を使用し「借金の有無」についてヒアリングをする(個人情報に関する「同意」の事前取り付け要)ことをお勧めしています。

2つ目に、「横領」等の不正行為ができてしまう「機会」があったということです。経理システム、口座残高システム等により不正な引出しや出入金があることを事前に発覚できなかったのかが問題です。金銭の出納関係については信頼のできる社員による小まめなチェックが必要でしょう。

そして3つ目は、「正当化」です。所長は総じて長時間労働で、緊急時には自身も運転業務にあたり、事故やトラブルの際には昼夜問わず対応を求められる厳しい仕事です。監査や調査等への対応、荷主対応等、経営者に代わり様々な業務に対応しなくてはならないポジションである場合が多いのですが、給与額はドライバーを下回ることも多くあります。

また、配車や運行管理等でドライバーから煙たがれることも多く、割の合わない仕事ともいわれることもあります。不正を起した所長は「こんなにたくさんの仕事をやっているだから多少のことくらいは当たり前だ」という感覚をもっています。つまり自身の行為を「正当化」していることが多いのが実情なのです。