第208回:運送業界におけるLGBTへの対応とは
【質問】わが社に最近入社した社員の中に、戸籍上は女性ですが、心も外見も男性の社員がいます。本人は公表しないことを希望しており、普段はドライバーとして男性社員と同じ重量物を扱う仕事をしています。雇用管理上、留意すべき点があれば教えてください。
最近は多様な人材が活躍できる職場環境を目指すため、各社が様々な取り組みを始めていますが、LGBTへの取り組みもその一つです。
LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティの総称です。性的指向や性自認の如何に関わらず、誰もが平等にイキイキと安心して働ける職場を作ることは非常に大事なことであり、今、関心が高いテーマの一つになっています。但し、中小運送会社の現状を見ると、LGBTへの取り組みを体系的に始めている会社はあまり見られません。まだ一部の運送会社の取り組みに限られています。
最近、この問題で運送会社から相談を受けることが時々ありますが、いずれも実際に該当人材を採用した後に、トイレや更衣室、休憩室、シャワー室などの対策の必要性に直面した会社です。LGBTは全国に一定数存在し、該当者数は左利きの人の割合とほぼ同程度(約1割)ともいわれていますので、本来は求人募集活動の段階からLGBTを想定した体制を整えておく必要があります。
例えば、相談しやすい男女複数の相談窓口担当者を選定しておく。社内で周知啓発を目的とした研修を実施し、社員の理解を深めておく。就業規則等に職場内での差別的言動を禁止する旨を規定し、会社の方針を社員に明確に伝えておく。その他、職場で通称使用を可とするのか、家族手当や福利厚生の対象者に同性のパートナーを認めるのか、なども予め検討しておくべきでしょう。
なお、トイレや更衣室等の設備や制服等に関する問題は、大変重要ですが、当事者への配慮が何よりも大切であり、本人の希望をよく聴取し、本人が働きやすい環境に整備することが求められます。なお、運送会社の場合は運転業務以外に力仕事の荷役作業が多いため、重量物の作業に関して特に注意が必要になります。
女性労働基準規則により、断続的作業で30㌔㌘以上、連続的作業で20㌔㌘以上の重量物取扱が禁止されており、腰痛予防対策指針では重量物取扱に関して、女性の場合は体重の概ね24%以下の重量制限が努力義務として設けられています。重量物の手積手卸作業がある場合は、フォークリフトを利用した機械積みの仕事に変更するなどの配慮が必要でしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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