電動フォークリフトを保有する物流施設を災害時の「給電拠点」として地域住民に知らせるアプリ「電源ドナー」の普及を目指すイーコース(菊竹玉記社長、東京都中央区)では、ディーゼルトラックを活用した給電の実現に向けても活動を展開している。

 

同社はこのほど、宮城県大崎市の大昇物流(和野裕一社長)の協力のもと、仙台市立の小学校で開催された防災訓練に4t車で参加し、トラック給電の実証デモを行った。車両側の技術評価ではいすゞ自動車東北(仙台市宮城野区)、バッテリー側はエナジーウィズ(東京都千代田区)が協力した。

 

菊竹社長は、「トラックから給電するには電力を変換するインバータが必要になるが、予め車載していれば、災害時に避難所などへ物資を輸送した車両で給電が可能になる」と説明。「エンジンを燃料で回すのは発電機も同じで、排ガスについてはトラックの方がクリーン。給電能力はトラックの大きさにもよるが、軽油200リットルならスマホ40台を約200時間充電できる」という。

 

 

訓練に参加した市内各地区の町内会長からは、「トラック給電というのは理屈では理解できるが、運送会社さんが実際にやっているところを見て有効性を感じた」「停電が長期化した場合に、今ある非常用発電機やバッテリーだけでは不安があった。人工呼吸器等を使用している医療的ケア児の家族には朗報」「東日本大震災を経験しているが、当時も停電で大変困った。トラック給電はどこの会社に依頼すればいいか教えてほしい」「物流企業だけに負担させるのは申し訳ないので、町内会でも検討していきたい」など、評価と賞賛の声が挙がったという。

 

 

菊竹社長は、「災害時の備えとして電気自動車(EV)で給電する取り組みは自動車メーカーが普及活動を展開しているが、EVから給電するには限りがあり、現場へ駆け付ける時と帰る時の走行に必要な電気を残す必要もあり、長期の給電には向かない」と指摘。また、「EVや発電機能があるEHEVは個人での所有が多いこともあり、災害時の避難所の数を考えると台数が全く足りない」という。

 

大昇物流の鈴木亮営業所長は、「我々は災害時に物資を輸送するが、その車両で給電もすることで、さらに地域住民のお役に立てるんだと町内会長さん達の反応を見て実感した。この取り組みを社内で共有し、良い会社づくりに役立てていきたい」とコメント。

 

菊竹社長は、「運送事業者さんは、いまあるトラックという資産を有効活用し給電事業に参加することで、企業イメージが向上するだけでなく、従業員さんのモチベーションも上がるはず」と説明。また、「社会貢献や地域貢献を意識されている荷主企業とともに給電事業に取り組むことで、ビジネス以外での結びつきをより強固にできる」とし、「災害時に貴重となる燃料の使用にも理解が得られやすくなるはず」とも。

 

今後の展開について同社長は、「電動フォークだけでなく、トラックも所有されている倉庫業青年経営者協議会の皆さんとともに、日本初のこの取り組みを全国の物流企業へと広げていき、行政との間で災害時支援協定の締結ができるようカタチづくりを進めていきたい」と語る。

 

 

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