昇降設備なにが大事? 施行に間に合うか
「昇降ステップがどこの店も売り切れていて、9月中に準備ができないかもしれない」。
3月の労働安全衛生規則の改正を受け、陸災防広島県支部が実施した説明会で出た質問だ。荷役作業時の安全対策の強化を目的に10月1日から昇降設備の設置範囲が、最大積載量2t以上のトラックにまで拡大されることになり、事業者の準備が進んでいる。しかし、約半年と短い準備期間もあり、いざ買おうと思ったら手に入らないという事態が一部で発生している。そもそも昇降設備にどの程度の基準が必要か、改めて考えたい。
同規則の改正は、陸運業で増加しているトラックの荷台から墜落、転落といった荷役作業時の労働災害の防止が目的。昇降設備の設置義務と保護帽の着用義務はそれぞれ範囲が拡大し10月1日に施行となる。昇降設備の設置義務は従来の最大積載量5トン以上から今回2トン以上にまで拡大。作業場の「床面と積載した荷物の上面との間」に加えて「床面から荷台の間」にも設けることが義務付けられた。
これを受けて、販売店でも売れ行きが大きく変わったという。カタログ、ECサイト、実店舗でトラックパーツや物流用品を販売するパーマンコーポレーション(大阪市西区)の広報担当者は「6月ごろから当該商品がよく動くようになった。一方、白ナンバーのトラックを持つ建設関係者などは最近知ったとの声もある」と話す。同社では手すりとステップが一体型で7000円から1万5000円くらいの商品がよく売れるという。なお、物流用品の通販事業を行うモノタロウ(兵庫県尼崎市)は、販売動向を一切開示していないため詳しい状況は分からなかった。
■昇降設備の基準は
冒頭の質問のように、施行までに手に入らない場合、どうすれば良いのか。広島労働局の労働基準監督官に聞くと「昇降設備は3点支持するなど、安全に昇降できることが大前提。持ち手とステップ一体型のあおりに引っかける商品である必要は必ずしもない」という。
足を掛けるステップと握り手など別々に売っている商品を組み合わせて昇降設備とすることも可能。脚立での代用は、作業現場の地(床)面が傾斜している場合など「場所に応じて安全に昇降できるよう配慮が必要」と見解を示す。
また、後部扉と水平に設けたバンパーは、踏面の幅が狭く、足を置くのに望ましくない形状の場合も。「安全な昇降からかけ離れた状況での使用は、行政の指導の可能性も出てくる」(同基準官)ため、異なる目的での使用は避けたい。
重要なのは昇降設備の形状ではなく、安全な体勢を保持して荷台から昇り降りできる設備であること。トラックの大きさを問わず増え続ける荷役時の墜落や転落での事故をいかに防ぐかを念頭に、10月1日の施行に向けて準備を進めたい。
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