第243回:令和時代の運送業経営 休暇・休業・休職対応編(41)
【採用・退職トラブル対応編】㊶
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前号に続き、「採用・退職時における留意事項」について運送業経営者が知っておくべき労働関連法の内容及び周辺知識について解説してまいります(その9)。
1.不当解雇リスク
中小運送業経営者からドライバーの「退職・解雇」に関する相談を受けることが多くあります。「業務指示に従わない」「言動に問題があり荷主から出入り禁止処分を受ける」など、ドライバー側に問題がある事例が大半です。
しかしながら、社員側が弁護士等の専門家に相談した場合には「不当解雇」「解雇無効」を主張されることが多くあります。
前号でも説明しましたが、「不当解雇」として月額給与の12か月分、また未払残業請求を同時に500万程度受けて、計1000万円の請求を受けている事例もあります。
「不当解雇リスク」は労務リスクの中で「未払残業請求リスク」と共に最も金銭的影響の大きいものであることを理解する必要があります。
ドライバー不足である現状では、ドライバーが現状の会社を辞めても働き口を多くあり、ドライバーもその現状をよくわかっています。
退職の際には多少問題があったケースでも決して対立的な構図にならない、喧嘩別れにならないよう対応する必要があります。
言いたいことをグッと抑えて、代わりのドライバーの採用に注力した方が得策でしょう。
2.不当解雇リスクへの対応策
これまで説明してきました通り「解雇」にはリスクがあり可能な限り避けた方がいいでしょう。まずは「退職勧奨」として進めていき、社員側の出方を見極める事が必要です。「退職勧奨」は社員側に退職するかしないか選択権があるので不当解雇リスクへの対応策としては有効です。
次に「解雇・退職」という判断に至った理由、経緯、会社業務への影響等を粘り強く説明し「自己都合退職」として話をしていくという方法で進める場合もあります。
会社に損害を与えたなど、社員側に相当大きな非がある場合には有効です。
ただし、運送業の現場の状況は複雑な場合も多くあり、客観的な証拠などがない場合にはなかなか非を認めないというケースもあるので注意が必要です。
また、「配置転換」を行う場合もあります。業務上の必要性により異動してもらうという方法で、労働環境が変わることで通常の勤務状態に戻ってもらう狙いがあります。「配置転換の拒否」は社員側の都合ですので、「自己都合退職」ということとなります。
ドライバーが「退職」する場合、不当解雇リスクには十分留意する必要があります。
以上、トラブルの多い「採用・退職時の留意事項」についての説明は以上です。
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