三菱ふそうトラック・バスはこのほど、EV小型トラック「eCanter」の新型モデルを発表した。シャシーラインアップを大幅に増やし、航続距離も99kmから324kmと多様なケースに対応。エアコン使用や寒冷地での使用によるバッテリー消費を抑える新機能も搭載している。

シャシーは、従来の1型式から28型式へと大幅に拡充。車両総重量(GVW)は従来モデルの7.5トンクラスに加えて、5トンから最大で8トンまで展開する。

キャブバリエーションも、従来モデルと同等のワイドキャブに加えて、小回りが利く標準幅キャブや中型「ファイター」と同等のEX拡幅キャブを追加した。

また、モーター式の動力取り出し装置(ePTO)を採用することで架装オプションも拡大。ダンプ、キャリアカー、脱着車、リヤクレーン、ゴミ収集車の架装が可能に。

バッテリーは、ホイールベースに応じて最大3個まで搭載。バッテリー(41kWh)1個搭載のSサイズは航続距離が116km、同2個搭載のMサイズは動236km、同3個搭載のLサイズでは同324km。商品・経営戦略本部の田中宏長氏は、「ラストワンマイルはもちろん、県を跨いで高速道路を走行する輸送など、用途に合わせて車種を選択いただける」と語る。

充電時間は普通充電(6kWh)の場合、バッテリーSサイズは約8時間、Mサイズは同16時間、Lサイズは同23時間。同氏は、「運送事業は稼働を止めないことが重要」と寄り添い、「50kWhの急速充電であれば、Lサイズでも150分に短縮できる」と付け加える。「ただし、急速充電設備は設置に数百万円が必要になるため、車両数台の導入では現実的とは言えない」とも。

新型モデルについて、「安全性能の面でも進化を遂げた」と語る同氏。被害軽減ブレーキ機能を有する左折巻き込み防止機能「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」、衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト5」を標準装備。運転注意力の低下を警告するドライバー注意監視システム「アクティブ・アテンション・アシスト」もオプションで搭載している。

 

同氏は、電気トラックならではの魅力として、「回生ブレーキ」を挙げる。制動力を「回生なし」から「強回生」までの4段階に強度を増やした。「一番強い回生ブレーキだと、アクセルから足を離しただけでフットブレーキを踏んでいるのと変わらないような印象で、運転時の疲れにくさや運転しやすさにも貢献できる」と胸を張る。

 

テレマティクス機能「Truckonnect(トラックコネクト)」は、車両購入から10年間、無料で提供される。残走行距離やバッテリーの残量、バッテリーが新品に対してどの程度、容量が残っているかなど、ポータル上で表示する。

 

また、同社では、新型モデル専用のリース商品「FUSOグリーンリース」の提供を開始。車両本体や充電器に加え、車両のメンテナンスサービスなど、EVトラックの導入・運用に必要な事項を網羅したパッケージとなっている。

 

「2017年から提供してきたノウハウに加え、世界各地で走っている実績がある。これが当社の強み」と語る田中氏。「エンジンを積んでいないからこその静粛性と振動の少なさもドライバーさんの負担軽減につながる」と強調した。

 

◎関連リンク→ 三菱ふそうトラック・バス株式会社