いわゆる宅配クライシスの問題で国交省も力を注ぐ再配達の削減。置き配や宅配ボックスの活用も広がり、対面せずに荷物を受け取りたいと考えるコロナ禍の事情も普及を後押しする。一方、不足する配達の担い手として軽貨物などの個人事業者に最前線を委ねるケースも増えているが、宅配ボックスに不慣れなドライバーらの対応を不安がる消費者の声も届く。宅配ボックスはメーカーによって扱い方が異なる場合もあり、宅配大手ではマニュアルに基づいた指導を定期的に実施するなど対策を講じている。

宅配ボックスを設置したマンションが都市部で増えているが、その傾向は地方の戸建て住宅にも広がっている。共働きで、通販を頻繁に利用するという兵庫県姫路市在住の女性(30)は「宅配ボックスに荷物は入っていたがダイヤルキーを回しておらず、鍵が掛かっていなかったことが何度かあった」と明かす。

置き配も考えたことがあるという同県に住む別の女性(57)は「安全優先で宅配ボックスを購入。でも先日、ダイヤルが回って鍵は掛かっていたが、4けたの暗証番号を書いた不在票を鍵のない郵便受けに入れたらダメでしょ?」と値が張る商品の盗難を不安がる。「ポストに不在票はなかったのに宅配ボックスのダイヤルが回されており、開けると荷物が届いていた」ということもあったらしい。

 

一方、「社名のない軽バンから見覚えのあるユニホーム姿の男性ドライバーが降りてきて、なぜかその会社とは違う荷物を受け取ったことがある」と話すのは岡山市東区の主婦(55)。宅配最前線の担い手として軽貨物事業者や、個人営業の黒ナンバー車などが新分野を切り開いており、「複数社の宅配荷物を積み合わせで配達する光景は珍しくない」と長年、軽貨物運送を手掛ける男性(43)は説明する。

 

こうした現状について宅配大手は「入社時や研修で、宅配ボックスに配達する際の注意点が記載されたマニュアルなどを活用して教育する」(ヤマト運輸・コーポレートコミュニケーション部)という。また、軽貨物事業者など外部に業務を委託する際は「契約時に配達マニュアルを配布・説明し、お客さまに安心して受け取っていただけるサービスを提供・維持するため、定期的にさまざまな取り組みを行っている」(同)としている。

 

 

日本通信販売協会がまとめた2020年度(2020年4月~翌年3月)の通販市場調査によれば、同年度の売上高は前年度比20.1%増の10兆6300億円で、5兆900億円だった10年前から倍増。コロナ禍で変化した生活スタイルも反映し、在宅時間を快適に過ごすための商材などを中心に好調な売れ行きを続けているようだ。

 

この先も通販市場の広がりが予想されるなか、商品を手元まで届けるドライバーの確保が課題となっており、新しい戦力として軽貨物の委託事業者が増加。また、再配達による現場の負担を軽減するアイデアとして宅配ボックスも普及するが、前出のような問題が派生している。

 

同じく大手の1つである日本郵便でも「宅配ボックスはメーカーや製造年などでさまざまなタイプがあり、担当者が取扱方法を個別に確認したうえで確実に配達。お知らせ通知が受け箱に投函されていないといった声を受け、配達担当者に指導している」という。また、「ゆうパックなどの荷物配達は一部で委託事業者が行っているケースがあり、手順や接遇に関するパンフレットを配布するなど配達品質の維持に努めている」(本社広報室)としている。