「2024年問題」対策で賃金体系の変更に着手する運送事業者が増えているが、「基本給を下げられた」「残業代がカットされ稼げなくなる」など、ドライバーからは不満の声が聞かれる。会社を守りたい運送事業者と「せめてこれまで通りの給与」を求めるドライバーが旗幟鮮明だが、運送経営者の意識の根底にあるのは、「運賃はこのまま上がることはない」という考えではないだろうか。

 

この悲観的な考えに一石を投じるのは、物流コンサル大手の船井総研ロジ(東京都千代田区)の赤峰誠司常務(写真)だ。「運賃を値上げしない荷主は運送会社に相手にされなくなり『輸送難民』になる」と指摘する同常務は、「2024年の法改正でこれまでの物流業界の常識や概念が大きく変わる。ドライバー不足や労働時間管理の強化で、荷主やノンアセット型の物流子会社は、これまでの選ぶ立場から選ばれる立場に転換する」と断言。「優先的地位は物流事業者側になるかもしれない」と語る。

同常務は、ドライバーの賃金体系で推奨する考え方として、「歩合給から時間給にシフトするとともに、ベースアップ制度を検討し実現する」ことを挙げる。

 

重要なのは、「ドライバーに不利益が生じないように『現状維持を最低賃金』とする」ことで、「労働時間を20%短縮し、賃金を20%上げる。いきなりは無理なので3年から5年かけて」と付け加える。また、「付帯作業や負荷となっている業務の洗い出しも重要」とも。

 

これらを実現するために、運送事業者が取り組むべき施策として同常務が挙げるのは次の5つ。

①荷主や元請けと適切に向き合い、値上げや条件変更を交渉

②付帯作業や待機などのオプション化を新運賃体系として確立

③コンプライアンス経営を重視

④荷主の『取引不継続リスト』を作成しておき、来たるべきX点に備える(X点とは需給バランスの逆転により、「運送会社が荷主を選ぶ」転換点)

赤峰常務は、「中小企業にとっては、かなりハードルの高い変革」としながらも、「時間をかけてでも少しずつ取り組むことが、結果的に生き残れて成長できる組織体になる」と語る。

一般メディアも「2024年問題」を取り上げることが増え、追い風が吹いている今、運送事業者は2024年を危機的に捉えるのではなく、業績回復・事業拡大の好機と考え、備えるべきかもしれない。